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続きはいつ?
[ 俺がこの気持ちを覚えてるうちに、道行き彼に囁き。*]
どうか、あっしの隣に居ておくれ……
[口から出たのはそんな願いだった。]
その時にお前さんが隣に居てくれたら、
あっしはもっと"好い"気分になるのだけれど……?
忘れて、ええよ。
───『愛しとる。』
[初めてか、もう何度目になるのかさえ、自分でもわからない言の葉。
他の吸血鬼にも囁いただろうか。
それとも、彼にしか囁いていないのか。
忘れてもいいという呪いの言葉を、魔法使いは落としていく。]
………
[忘れていい、そう前置いて告げられた愛してるの言葉。
ならば自分もと同様に言葉を重ねればいいだろうに、それができないのは何の躊躇いからか。
その言葉を、口にする事に慣れていない、だけではないのだろう。
遮るように、その唇ごと、伸ばした掌で覆った。]
おやすみ。
[頬を触れる挨拶の口付けは、まるで『さよなら』のように感じた。
忘れていいと謂った。
だから、それでも構わない。
──そう思っているなら、バンダナを巻いたりなんてしなかったろう。
額へ口付けてから、男は部屋をあとにした*]
[来た時よりも皺の寄った気がする地に落ちた紙。
拾い上げる前に此方がその華奢な体を”拾い上げてしまう。”
少し挑発めいてしまったか、と暫し口を閉ざす参休を伺う。
時々みる食事だってさほど大食いとは言えない自分よりも量は大幅に削られたメニューだからその腕の中の身体は壊れてしまうんじゃないかと危惧してしまう。
自分が促すまま寝台へと膝を付く彼に笑みを浮かべ、]
嗚呼、是非、ね?イイことは知りたいかな。
……ン、
[耳元へ寄る指先を敏感に感じながらふる、と震える。
空気の振動を普通より少しだけ、敏感な耳朶は僅かな刺激を受け取り、そういえば食堂でもこうして触れたか、と僅かに熱の篭る息を漏らしながら思った。]
……おやすみ、
[かろうじて、言葉になったのはただそれだけ。
遠のく気配にも、戸の開閉音にも気付かずに、眠りに落ちる。
腕に巻いたバンダナの事すらも、ゆっくりと眠りの中へと沈んで。*]
[目を伏せる。
今『は』鮮明に思い出せる。
声も匂いも味も、表情も。
巻いた包帯も、剥がしたガーゼも、拭いた体も。
おやすみの、言葉も。]
───いつ、忘れる?
[『昔』を忘れてしまった時のように。]
ああ、存分に喰らわせてやろう。
――残すなよ。
─ヴェールの向こう側─
「クアトロ、できたかい?」
ああ、出来たよ。
「こいつはいい出来だ!」
そうかい、そりゃよかった。
[淡々とした声と、無駄にトーンの高い声が会話をしている。
ブツ切れになる映像は頭痛のせいでノイズがかかった。]
[大きなカンバスに向かう、何かを描く筆。
完成品が並ぶ部屋。
塵のように転がる硬貨の山。
乱れたシーツの上に組敷いた、誰か。]
「忘れないで、クアトロ。
キミは、ボクを─────」
[嬌声が聞こえて、重なる。
消えた記憶の誰かと、昨夜のヒューと。]
[弓形の唇が、好いことを知りたいと囁く
ああ、それなら望むのは先程の――]
……ケイイチ
触れて、くれ
[耳朶を擽る指先はそのままに一度目を伏せ、後ろ手で帯を解いた。そのまま長着を押さえる腰紐も解いてしまえば、弾みで緩んだ長襦袢の襟元から鎖骨が覗く。指先を少々寄せただけで震えを見せる程意識が耳へ、音へと傾けられている
……触れられるのは好かった。温もりが胸の奥を掠めていく気がして]
[黒髪へ指を絡めるようにして右耳に掌を押しつけてやれば、己の内を巡る血流の速さまでも捉えられてしまうのだろうか]
─昨晩・回想─
そう、信じたいね…
[
自分たちの言葉なんて本当に
どれも真実でどれも嘘で。
食事の合間に囁かれた言葉
続きはいつ?と訪ねた答えは
ふふ、また邪魔が入るんじゃない?
いいよ、付き合う
どうせすることもないなら
手を動かすだけでも違うだろ
誰かれ構わず食いたいなんて
冗談をまとわせ言ずに済む
[相変わらず笑ったままそう告げ
彼と自分はどこか似ている気がした
冗談の様に、本気の言葉を
本気の様に嘘の言葉を囁く]
俺もその手はよく使うよ
絵を見て何を考えていたか
本当のことを言いたくなったらまた話を
[つまるところ自分は退屈で、誤魔化されたことが不満なだけ。クアトロの
[途切れて返される言葉。
にぃ、と笑みを浮かべ、ヘッドフォンを近くに置く。]
承知しましたよ、っと。
[息が乱れる様子を感じながら解かれる帯にふと見入るように抱えた手は止まる。襟元が崩れ、現する鎖骨にこく、と喉仏を動かした。
与えられる擽るような耳朶の感覚に欲が込み上げる。
とくり
己か、参休の鼓動か。どちらともつかない音を聞いて帯が解かれるのを待ち、その体を寝台へと横たえた。]
その袂、あまりはだけさせない方がいいね。
とても色っぽくなるから。
[襟に手を伸ばし、撫でるようにその飾りに手を掠め、細い身体に触れる。
自分は下位であるのに下に見る様子は心底不思議な感覚だった。]
……───。
[何もすることがないなら。
宙に手を浮かせて、何度か握っては広げてみる。
もちろん何が描けるわけでもない。
見透かすのは得意でも、見透かされるのは得意じゃない。
誰にも等しく、立場の弁えない口調で
何も考えていないように思えてその実。
誰にも等しく、距離を保って
何を考えているのかわからない【4】の瞳。
短い会話の中に感じた類似。
浅い息を吐いた。]
───傍、こん?
[下位の男に命令の力などない。
けれどもこれは『懇願』ではない。
渦巻く渇きを満たしたいが為。]
わしと暇潰し、……しょーや。
[一滴落とす、罠。]
──嫌よ。
貴方と暇潰しをすることに、何の意味があるのかしら?
[己が他者と交わろうとするのは己が目的の為だけ。
それ以上もそれ以下もない中で、彼の為に何かしようと思える何かがあるわけもなく。
声音は蔑む色を濃くして、口元は薄く歪めたまま。
もしかしたら、過去に何かあったかも知れないが、それも今の己には関係のないこと。*]**
暇潰しに意味なんかなかろ。
『オニーサマは幾分冷たくあられますこと。』
[髭面の糸目が、目の前の端正な男の口調を真似て揶揄する。
蔑む色には唇に弧を浮かべて、笑って見せる。
こんな風に揶揄するのは初めてか、過去にもあったのかもしれない。
思い出そうともしない『今』、そんなことはどうでもいいことなのはお互い様か。]
[袖机へ置かれるヘッドフォンを横目で追う。そのまま聴覚に重きを置くケイイチが音源を脇へやった意味へふと思いを巡らせてしまい――ひゅ、と喉が鳴った。
“意識を全てこちらへ振り向ける為ではないか”だなんて思考が過ぎってしまったなら、自ら言いつけた事であろうとも少々動揺するというものだ]
……ケイイチ。
[背を寝台に預けて低く囁く。耳元に当てていた手は下方へと滑らせて、時折上下する喉仏に親指の腹を当てた]
色香であれば……
其方の方が、ッ……余程。
[掌が此方の身体を滑る度に釣られて動く鎖骨であるとか、あるいはゆっくりと囁いてみせる口元であるとか、光源を負って濃く落ちた陰が個々の動作を際立たせていく。それらを眺める目元は随分と熱に浮かされ、ケイイチに向けて囁く声は時折喘鳴を間に挟んだ]
[肌を探られる度、身体の芯が熱を持っていく。指先などもうきっとケイイチのものより温度を上げているだろう。
縋るようにケイイチの襟元を掴み、もう一方の掌で腹の辺りに触れた]
……いいの、か
[“こちらばかりに与えていて”とまでは口にしなかった――長々と喋る余裕はもうあまりない。だからケイイチを引き寄せて、同じ温度を湛えた場所がないかと探りを入れる]
昨晩薬を飲んでいないね?
なにを。
ちゃんと飲むって、持っていったじゃろ?
[息をするように嘘を吐く。
まさかそんなこと有りはしないだろうとでも謂いたげに。]
しっかり飲んだよ。
[肩を竦めて、隠すのは微かに上がった息。
『吸血鬼』に隠しきれるとはあまり思ってはいないが。]
そう……
[クアトロの嘘に吸血鬼は糸のように目を細め、]
"今晩は必ず薬を飲め。"
[次の瞬間に見開いた双眸は紅く紅く血の色に染まっていた。]
[低く囁かれた声にふと静止の意かと考えを過る。まさか動揺しているとは知らず。だが喉元を猫のようになでられれば甘えるように笑う。]
さー?それはどうだろうね?
[さぁ?そう言われるなら、と上を脱ぎ、細いとはいい難い身体を露にする。
時折摘んだりくるりと輪を撫でたりする強い刺激に変えながら色を帯びる喘ぎにずっ、と中心な血が溜まる。]
でもね、凄くかわいいよ。
[クス、と男女の交わり最中のような甘い言葉を紡ぎながら暫し立場逆転を楽しむ事にする。]
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