52 薔薇恋獄
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[ 灯りが消えた、暗闇の中で ]
『逃げて』
『お願い』
[ 搾り出すような、声がする ]
日向っ!?
[暗闇のなか、搾り出すような儚い声。
胸の痛みは、一層ひどくなるけれど、何も見えなくて]
お前も、百瀬探しに行かないの?
すっげー雨だし。
[出てゆく石神井を見て、土橋にも声をかけてみたり]
[まさか。
そんなわけがない。
けれど、胸の痛みは治まらない]
日向、……蛍紫……っ!
いきますよ、もちろん。
[何を当然、といった表情になった]
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[玄関から飛び出してから、雨音が急に激しく響いて来て。 足が止まったところで、一瞬目の前が真っ白になって……。 そのまま暫く、雨の中で立ちすくんでいた。]
……カイ、くん、センセ、さがさ、ないと。
[中庭にその二人が居たことも、そして今の間に停電があって……克希の姿がなくなったこともまだ、知らないまま。 再び歩き出そうとしたところで、雨音に交じり微かに聞こえた声>>8]
………。
[それは確かに、戻ってこい、と言っていて。 それは確かに、あの人の、声だった。]
(14) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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はいはい、はぐれないよーにね。
[ついでに一緒にフロでも入ったら、とは言わなかった]
……何があったんだよ、日向ぁっ!
[彼女の姿が在った場所には、ただ雨粒が打ち付けるだけで。
生きている者は当然、死んだ者の姿も見えず]
はい!
[元気よく答え、外へと。
…もし、言われていたらジト目で見たかもしれない。]
|
[そうして、玄関まで引き返してきたその姿はずぶ濡れだった。 そこに先程の呼び声の主の姿>>17が、見えた気がして……。 ただ小さく息を吐いて、姿見のある側に寄りかかるようにして、倒れた。]
(21) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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[元気の良い反応に、土橋はわんこみたいで可愛いなーと思った]
俺も、どーにかなる……のかなあ。
ウーン。
[多分、ワンコならきっとハスキー犬だと思われる。]
[そこだと判ったのは、初めに日向と会った場所だから。]
楓馬……。
[苗字でなく、名を呼んだことは、きっと無意識に。]
[犬好きなので、帰ってきたら思い切りナデナデするつもり]
……。
[濡れて雫の滴る前髪の下から、虚ろげな眼差しが返る。
けい、と呼ぶのは、喉が引き攣って上手く声にならず、くちびるの形だけ]
[虚ろな眼差しに、眉間に皺が寄った。
己は視えて聴こえるだけで、同調はしないから。
だから、彼と日向が抱える苦しみは判らない。]
………すまん。
耀の時も傍にいてやれなくて。
日向のことも……
切欠は、おそらく暁様とやらなんだろうが。
暁様……とやらの霊は、俺には見えてないから
何がなんだかで。
[起こす為に手を差しのべながら、ぽつりと告げる言の葉。]
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―― 玄関 ――
[名前を呼ぶ声>>25が、聞こえた。 今再び、顔を上げた。その顔は、酷く濡れていた。
漸く、まともにその人……哲人の目を、見た。 ただ、ぜえぜえと擦れた息ばかりが出てきた。
身体はひどく重くて……そんなときに、立てるか、と聞かれて>>28。 頷きは返せなかったが、それでも、身体を少しだけ起こした。 ……彼がすごく近くに居て、そして確かに身体を支えられている感覚が、あった。]
だいじょうぶ、あるけ、る。
[何とか両脚で立ち上がる体勢になってからは、哲人の支えを借りながら、彼が促す場所へと]
(39) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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[蘭香のことも、――日向のことも。
暁様、という誰かのことは分からないが、ゆるゆる首を振った]
……謝るのは、オレ。
居たのに、分かるのに、……何もっ、出来なくて。
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―― →浴室 ――
[>>48無理、との言葉に、擦れた声で繰り返した。]
してない。
……して、ない、ってば。
[まるで決まりきった掛け合いみたいとまで、思えた。 そして、本当は「していた」のだとも見破られるのだろう、とも思った。 少し顔を下げながら、やがて浴室へ続くドアを潜った。
哲人の先の言葉と、ぼんやりと把握した内装から、その場所が何処なのかは判る。 少し大きめのバスタブには十分に湯を張れる状態。 洗面所の前まで着いてから、一度、その場に座り込んだ。]
(59) 2011/05/18(Wed) 01時半頃
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[すぐ戻るという哲人>>67を引き留めたりはせず、ただ去っていく背を見送って。 そのまま、ひとりで、じっと座り込んでいた。 シャワーからの暖気は部屋中に次第に広がって。 喉も少し、楽になった感じがした。
……ああ、彼の身も濡れていたなと、漸く気づいた。 少し考えてみれば、その理由はすぐに解った。]
(71) 2011/05/18(Wed) 02時頃
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[一人きり、俯いていたところで。 誰かの声>>72が聞こえた気がして、はた、と瞬いた。 扉の方を見たが……濡れた目には誰が居るのかよく捉えられなくて。 だれ、と訊こうとしても、声にすることができないままだった。
此方に視線が向けられているとも思わずに、再び、俯いた。]
(82) 2011/05/18(Wed) 02時半頃
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……うん、生きてる。 もう、戻って、来たの。
[今度は、はっきりと哲人>>86の声だと判った。 ノックされた扉越しに伝える声色は、少し弱く、曇った声だった。]
(90) 2011/05/18(Wed) 03時頃
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ヴェスパタインは、セシル…志郎の名前も、その時扉越しに聞いた気がした。
2011/05/18(Wed) 03時頃
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………、
嫌だ。 離れ、ないで。
[そう口にしてから、大きく息を吐いて。 申し出に、ゆっくりと体を起こして、そっと、扉を開けた。 その頬は、雨ではない滴で濡れていた。]
(95) 2011/05/18(Wed) 03時頃
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―先の話・栖津井&浜那須の部屋―
栖津井先生。またすり傷作ってしまいましたー
…あと、薔薇の棘、刺さってしまいました
[部屋の中に耀はまだ横になっているだろうか。部屋の扉を叩き、返事を待たずに中に入る]
……あれ、先生居ない?
[辺りを見回せば、布団に寝かしつけられている耀独り。胸の辺りがゆっくり上下しているので、静かに眠っているのだろう。
先輩や先生からはどれぐらいのことを教えて貰ったのか]
………そうだ
[ふと思い付いて。耀の傍に寄ると、耳元でそっと名を囁いた。
さて、彼は『誰』と勘違いしてくれるのだろう]
[じいと眠る顔を見ていると、不意に母の顔と重なった。驚いて目を擦り、改める。
どうして…。
手を伸ばして、顔にかかる髪を横に払う。見える火傷の痕に息を飲んだ]
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[再び顔を見ることができた哲人に。 ……ここに、という言葉に。 小さく、けれど確りと頷いた。 彼のその挙動を見て何かしら感付く余裕はこの時ほとんどなく。
そして言葉通りに、服を着たままシャワーを浴びた。 正直、重くて気分の良いものではなかったけれど……かといって今脱ぐ気もやはり起きなくて。 それに温まることもできたから、まあいいや、という気持ちでもあった。
それから、哲人が抱えてきていたタオルや毛布を幾らか借りて]
テツだって、救えない一歩手前まで、濡れてる。 ……シャワーしなくて、いいの。
[冗談じみて言うことができる程度には落ち着いてきていたし、冗談っぽく言わないとまたあんな風に急に泣き出してしまいそうだ、とも思ってもいた。
その泣き顔のかたちまで、ある だれか の思い人にうりふたつかどうかは、知りようがないのだけれど。]
(100) 2011/05/18(Wed) 04時頃
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―3年前のある日―
[TVのニュースを見ていた母が、小さく悲鳴を上げた。
何事かと、手を止めてTV画面を見ると、どうやら火事で家が全焼し、一家族が死亡と重傷だという]
…ふぅん
[『ただのニュース』だと思い、再び宿題のプリントに鉛筆を走らせる。暫くすると、母の押し黙った嗚咽が聞えてきた]
奏音さん、どうしたの?
[心配になって声をかけると、母に強く強く抱き締められた。しがみつかれたというのが正しいのやも知れぬ]
『…調音ちゃん、調音ちゃん……。死んじゃった。ママの…従姉妹が、死んじゃったの…』
[震える背を撫でることしか出来なくて]
…苦しかっただろうね
[そんな事しか。言えなかった]
ヴェスパタインは、テッド…哲人の傍で、少し伏し目がちに、佇んでいた**
2011/05/18(Wed) 04時頃
―時は流れる―
[そうして。火事のニュースを見る度に、母は呟く]
『ヨーカちゃん、無事かなぁ…』
[先の火事で、唯一生き残ったという従姉妹の子供の名を呟く]
『心配だけど、連絡できる訳じゃないしね…』
大丈夫だよ。奏音さんがこんなにも心配しているんだから
きっと元気に過ごしているよ
『うん…。そうだね。そうだと…良いね』
[そうして決まって母は、調音を抱き締める。
直接触れられない代わりに。
『ヨーカちゃん』の代わりに**]
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