[このままがいい、この場所がいい。そう思うのは外の世界のことを考えるとどこか恐ろしく、冷たい雨が胸に溜まっていくような感覚に囚われるから。
それは何かを喪った隙間に入り込んで心を芯まで冷やしてしまうのだ。]

[だが、ああ。それだけではない。確かにこの小さな箱庭を愛していた。

クレパスキュールのお茶目さ

モナリザの明るく弾む声

ワクラバの不器用な手

モスキートの謎かけめいた言の葉に乗せられた優しさ

エフの決して本気ではない意地悪

ルシフェルの無機質さの奥に確かに感じる温かさ

アシモフの可愛らしく揺れる尾

雨粒に打たれる身体に誰かが傘を差し出してくれたように冷たさから守ってくれるのだ。]

[頬を流れ落ち膝に乗せた抱き枕を濡らす、その水に気付かずに笑う]