52 薔薇恋獄
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[ 灯りが消えた、暗闇の中で ]
『逃げて』
『お願い』
[ 搾り出すような、声がする ]
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そんなこと、無いです。 助けようとしてくれて、ありがとうございます。
[眉を下げる桂馬に、いつも通りとはいかないけれど、にへらと笑い。 文に、哲人に、良数に。寧人に、成人に、それぞれ。 ありがとうございました、とぺこぺこ礼を述べていたところで―― 激しい音とともに、何も見えなくなった]
(2) 2011/05/18(Wed) 00時頃
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日向っ!?
[暗闇のなか、搾り出すような儚い声。
胸の痛みは、一層ひどくなるけれど、何も見えなくて]
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なん、 ……?
[照明が灯るより早く、漂ってきた香りに気づいた。 何処かの窓が壊れたのだろうかと、訝しげに鼻を擦っていれば]
かつ、き……?
[良数の声>>1に、はっと顔を上げる。 確かに、其処に居た同窓生の姿は、まるで見えない薔薇になってしまったかのように、忽然と]
(5) 2011/05/18(Wed) 00時頃
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お前も、百瀬探しに行かないの?
すっげー雨だし。
[出てゆく石神井を見て、土橋にも声をかけてみたり]
[まさか。
そんなわけがない。
けれど、胸の痛みは治まらない]
日向、……蛍紫……っ!
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……せんせ、蘭香、おねがい。
[克希の居た場所を、食い入るように見つめていた眼差しを落とし。 蘭香から腕を解くと、立ち上がって広間から走り出た]
(9) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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いきますよ、もちろん。
[何を当然、といった表情になった]
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―→ 二階廊下、つきあたりの窓辺 ――
[風雨に押された窓は、ひどく開きにくかったけれど、無理やり押し開け。 痛いほどの雫が叩きつける外に、顔を出した。
叫ぶ声は、嵐のような轟音に掻き消され]
(15) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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はいはい、はぐれないよーにね。
[ついでに一緒にフロでも入ったら、とは言わなかった]
……何があったんだよ、日向ぁっ!
[彼女の姿が在った場所には、ただ雨粒が打ち付けるだけで。
生きている者は当然、死んだ者の姿も見えず]
はい!
[元気よく答え、外へと。
…もし、言われていたらジト目で見たかもしれない。]
[元気の良い反応に、土橋はわんこみたいで可愛いなーと思った]
俺も、どーにかなる……のかなあ。
ウーン。
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[いくら叫んだところで、いくら目を凝らしたところで、何にもならない。 やがて、ただ風雨を吹き込ませるだけの窓を閉じると、ずるりと座り込んだ。
頭を預けた壁が、じとりと水気を含んで色を変えてゆくのを、ぼんやり見つめながら。 投げ出した指先を、がり、と床に突き立てた]
(26) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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[多分、ワンコならきっとハスキー犬だと思われる。]
[そこだと判ったのは、初めに日向と会った場所だから。]
楓馬……。
[苗字でなく、名を呼んだことは、きっと無意識に。]
[犬好きなので、帰ってきたら思い切りナデナデするつもり]
……。
[濡れて雫の滴る前髪の下から、虚ろげな眼差しが返る。
けい、と呼ぶのは、喉が引き攣って上手く声にならず、くちびるの形だけ]
[虚ろな眼差しに、眉間に皺が寄った。
己は視えて聴こえるだけで、同調はしないから。
だから、彼と日向が抱える苦しみは判らない。]
………すまん。
耀の時も傍にいてやれなくて。
日向のことも……
切欠は、おそらく暁様とやらなんだろうが。
暁様……とやらの霊は、俺には見えてないから
何がなんだかで。
[起こす為に手を差しのべながら、ぽつりと告げる言の葉。]
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……けい。
[蛍紫が、『楓馬』なんて呼ぶから。 声変わりもまだだった頃の呼び名で、返してしまったのもきっと、無意識]
……何も、出来なかった。 オレ、出来た筈なのに……、何もしてあげられなかった。
(42) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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[蘭香のことも、――日向のことも。
暁様、という誰かのことは分からないが、ゆるゆる首を振った]
……謝るのは、オレ。
居たのに、分かるのに、……何もっ、出来なくて。
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[床を引っ掻く手を、止められれば抗わず。 けれど、重ねようとした手は、力なく滑って。
ごめん、と泣き笑いのような表情で、蛍紫を見上げたきり。 ふつり、意識を落とした*]
(44) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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―先の話・栖津井&浜那須の部屋―
栖津井先生。またすり傷作ってしまいましたー
…あと、薔薇の棘、刺さってしまいました
[部屋の中に耀はまだ横になっているだろうか。部屋の扉を叩き、返事を待たずに中に入る]
……あれ、先生居ない?
[辺りを見回せば、布団に寝かしつけられている耀独り。胸の辺りがゆっくり上下しているので、静かに眠っているのだろう。
先輩や先生からはどれぐらいのことを教えて貰ったのか]
………そうだ
[ふと思い付いて。耀の傍に寄ると、耳元でそっと名を囁いた。
さて、彼は『誰』と勘違いしてくれるのだろう]
[じいと眠る顔を見ていると、不意に母の顔と重なった。驚いて目を擦り、改める。
どうして…。
手を伸ばして、顔にかかる髪を横に払う。見える火傷の痕に息を飲んだ]
―3年前のある日―
[TVのニュースを見ていた母が、小さく悲鳴を上げた。
何事かと、手を止めてTV画面を見ると、どうやら火事で家が全焼し、一家族が死亡と重傷だという]
…ふぅん
[『ただのニュース』だと思い、再び宿題のプリントに鉛筆を走らせる。暫くすると、母の押し黙った嗚咽が聞えてきた]
奏音さん、どうしたの?
[心配になって声をかけると、母に強く強く抱き締められた。しがみつかれたというのが正しいのやも知れぬ]
『…調音ちゃん、調音ちゃん……。死んじゃった。ママの…従姉妹が、死んじゃったの…』
[震える背を撫でることしか出来なくて]
…苦しかっただろうね
[そんな事しか。言えなかった]
―時は流れる―
[そうして。火事のニュースを見る度に、母は呟く]
『ヨーカちゃん、無事かなぁ…』
[先の火事で、唯一生き残ったという従姉妹の子供の名を呟く]
『心配だけど、連絡できる訳じゃないしね…』
大丈夫だよ。奏音さんがこんなにも心配しているんだから
きっと元気に過ごしているよ
『うん…。そうだね。そうだと…良いね』
[そうして決まって母は、調音を抱き締める。
直接触れられない代わりに。
『ヨーカちゃん』の代わりに**]
―現在―
[火傷の痕。『ランカ』という名前。微かに見える母の面影]
…はんっ
まさか
[打ち消した。髪に頬に触れる手は、何故だか止まらない。
起きぬ気配にもう一度、耳に唇寄せて]
ら ん か
[*名を呼んだ*]
―時は流れるリテイク―
[そうして。火事のニュースを見る度に、母は呟く]
『ランカちゃん、無事かなぁ…』
[先の火事で、唯一生き残ったという従姉妹の子供の名を呟く]
『心配だけど、連絡できる訳じゃないしね…』
大丈夫だよ。奏音さんがこんなにも心配しているんだから
きっと元気に過ごしているよ
『うん…。そうだね。そうだと…良いね』
[ニュースの後、決まって母は調音を抱き締める。
直接触れられない代わりに。
『ランカちゃん』の代わりに**]
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