22 共犯者
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/08/06(Fri) 00時半頃
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[森の奥の柊の木。 ぷちり、とその葉を摘んで。 村に戻るべく踵を返した時、見慣れた姿が目に入った。]
へへ、お先に葉っぱ貰っちゃったよ、ニール。
[笑いかけて、そのそばに一歩足を踏み出した時]
ニール、どうしたの……?
(12) 2010/08/06(Fri) 01時頃
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[ニールの体は、青白い炎に包まれていた。]
(13) 2010/08/06(Fri) 01時頃
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ニール……。
[一歩 また一歩 近づいても、炎の熱は感じられない。 こんな事、初めてだ。]
[すぐそばまでたどり着いた。彼の手に触れようとトニーが手を伸ばしかけると、それを止めるように頭を振った。]
[ニールの右手は、いつものようにトニーの頭を撫でようと伸びたけれど、トニーの髪にも頭にもなにも触れはしない。]
(19) 2010/08/06(Fri) 01時半頃
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[やはり……。
同胞から微かに感じた匂いはこの男のものだったか。]
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そんな……嘘だ。
[信じられない思いが口からこぼれ出す。]
[すると、炎の中のニールは、少し困ったように苦笑いを浮かべた。
そして、別れの挨拶のように片手をあげて]
ニール、消えないでよっ!
[ふっ、とその姿を消してしまった。]
(22) 2010/08/06(Fri) 01時半頃
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[どのくらい茫然と立っていただろう。]
[やがて、森の中をめちゃくちゃに走り出した。どこかにあるはずのニールの*亡骸を探すために*]
(23) 2010/08/06(Fri) 01時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/08/06(Fri) 01時半頃
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─ 翌日午後・礼拝堂 ─
[贅沢ではないが、司祭のささやかな心尽くしが、入り口近くに設置された大きなテーブルに載せられている。
だが、それらを賞味しようと来ている者は誰もいない。]
[唯一、この場にいるのは、朝方森から戻ってからずっとここにいて、泣き疲れて眠ってしまった子供だけである。]
─ →回想・前夜の森─
(86) 2010/08/06(Fri) 23時半頃
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─回想?前夜の森─
ニール、ニール!どこにいるんだよーっ!
[もう何回転んだり、曲がり損ねて、木々にぶつかりかけたりした事だろう。 さっき、その姿を見た相手を求めて、あてもなしに駆け続けていた。]
いるなら返事してよーっ!
ニール!
[返事が返る事は恐らくは無い──頭のどこかではそれはわかっているけれど]
(95) 2010/08/07(Sat) 00時頃
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[前方に人影が見えた。
壮年の男のものではない。長く伸びた髪と装いは黒く、愁いを帯びた顔は白く闇に浮かんで──]
マーゴ?
[思わず立ち止まる。 黒衣の少女は、道の脇を指差した。]
ありがと、マーゴ。
[下生えをかき分け、進む。]
[横たわる男の亡骸がそこにあった。]
(103) 2010/08/07(Sat) 00時頃
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靴磨き トニーは、涙をこぼす。夢の中、礼拝堂で。
2010/08/07(Sat) 00時頃
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[倒れているニールの横に座り込む。 痛みや苦しみをこらえている表情ではなかった。 意外なものを見てびっくりしているように、切れ長の目を見開いて──もうその目はなにも写しはしない。]
[ブルーノが、死者を送る際時々そうするように、ニールの瞼を下ろしてやった。]
「トニー、トニー?」
[誰かに呼ばれたような気がした。思わずその声に答える。]
『……村の誰かがニールを連れにくるまで傍にいるよ。大丈夫だよってば』
(114) 2010/08/07(Sat) 00時半頃
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靴磨き トニーは、ふと目を開いた。
2010/08/07(Sat) 01時頃
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/08/07(Sat) 01時半頃
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─ 礼拝堂 ─
──ん゛、ヴェス?
[間近に見えたのは、ヴェスパタインの気遣わしげな顔。]
みんな、ヴェスに頼んだの?酷いや。
[村に残ってるみんなは何を考えているんだろう。 ニールを広場まで運ぶメンバーに、一晩中森を歩いて疲れてるはずの、おまけに足の悪いヴェスパタインを入れるなん……て?]
え、……と。
ごめん、寝ぼけてた。今言ったの気にしないでね。
(141) 2010/08/07(Sat) 01時半頃
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靴磨き トニーは、気恥ずかしげに言った。少し赤面している。
2010/08/07(Sat) 02時頃
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聞いてくれるの?ありがとう。
昨夜あった事、そのまま夢で見ただけなんだけどね。
[そう前置きして語り出す。]
[柊の傍でニールを見た事
ニールの姿が、自分が今まで見た死者たちとは違う様子だった事
ニールを捜していた時、マーゴを見かけた事
朝、村から誰か来るまで、ずっとニールの傍に座っていた事]
──ニールは、他の人とは違っていたかもしれないね。
でも、ニールは「ミツカイサマ」ではないと思ってる。
(146) 2010/08/07(Sat) 02時頃
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うん……。
おいらはね、「ミツカイサマ」や、このお祭の神様の声がもしも聞こえたら、お話したいって思ってるの。聞きたい事があるから。 ニールに、その事を言ったらさ、ニールにも聞いてみたい事があるから、「ミツカイサマ」や神様に代わりに聞いておいてくれって。 そう言っていたんだ。それも、一回だけじゃない。聞きたい事が変わったからって、昨夜改めてその話をしたんだ。
だから、違うと思ってる。
(151) 2010/08/07(Sat) 02時頃
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[ 「大丈夫か」とは尋ねなかった。
ありきたりの慰めの言葉を掛けることもしなかった。]
満月まであと少し。
あと少しでこの儀式も終わる。
[ 労うようにか。励ますようにか。
マーゴの件には触れず、淡々と事実と希望だけを述べた。]
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─ 礼拝堂 ─
[さて、ヴェスパタインにどこから話をしたものか。 しばし考えて、思いつくままに喋ってみようと決めた。]
……ここ半月以上前からかな、ブルーノ様は、時々機嫌が悪くなってたんだ。最初は、なんでだかわからなかったけど、そのうちに気がついた。おいらや村の人がお祭の話をした時に、ブルーノ様は怒っていたの。
(162) 2010/08/07(Sat) 08時頃
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─ 礼拝堂 ─
最初はね、派手にお祭りをお祝いするのって、あんまりいい事じゃないって考えてるのかなって思った。でも、ヘクターに聞いたら、前にやったお祭の時は、ブルーノ様は、何かの役をしていたっていうし。
……なんだかね、このお祭でいってる神様は、普通においらたちが考えてる神様と違うのかな?ってそれまで思ってた。
(169) 2010/08/07(Sat) 12時半頃
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……なのかな。
それで、ソフィアが……森で見つかった時に、ブルーノ様は、パピヨンの所に話をしに行って、──ああ、そう言えば、その後にニールがここに来て、真面目な顔でブルーノ様と話していたっけ。
(173) 2010/08/07(Sat) 13時半頃
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なんだかわからなくなってきちゃったんだ、おいら。
この村の神様や「ミツカイサマ」が、聖書の神様や天使様と同じなのか違うのか。
[もどかしげに、考え考え喋っている。
そして、ヴェスパタインが今自分の話を聞いてくれている事を、とてもありがたいと思っていた。 もしも、神様や「ミツカイサマ」に会ったなら、どんな風に話したらわかってもらえそうか、後でヴェスパタインに相談してみよう。]
(175) 2010/08/07(Sat) 14時頃
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……今のこの村ってね、アブラハムとヨブ、二人分の大変な事をいっぺんにやらなきゃいけなくなっているんだ。
でも、そんな事、普通の人にはできるのかなぁ?
大昔の人たちは、そんなにえらい人たちばっかりだったのかなあ?
おいらには、できない気がする。
(176) 2010/08/07(Sat) 14時頃
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―――ああ。
俺とアンタの二人で儀式を終える。
それこそが、それだけが、俺の、願いだ。
[虚空を見つめ、そう同胞に答えた。]
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御恵みを与えるのも、全てを奪うのも神様……。
[聖書には、確かにそれを思わせる挿話がいくつも書かれている。だが、目の前の青年が口にした話を聞くと、]
じゃあ、……神様は、おいらたちがそれを忘れてしまっていたから、怒ってんのかな。
(180) 2010/08/07(Sat) 14時半頃
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[でも、と考える。]
だけどね、おいらたちはもう昔みたいには戻れない、 そうだよね?
だったら、おいらたちは神様と共にあるには、どうしたらいいんだろう……。
[そこまで言って、ふと気付いた。]
そうだ、お茶でも入れよう。 ヴェスにはお話聞いてもらったしさ。
(182) 2010/08/07(Sat) 15時頃
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靴磨き トニーは、ランタン職人 ヴェスパタインに、何か食べるようすすめた。
2010/08/07(Sat) 15時頃
ところで…。
あの男。イアン・マコーミック。
アイツの事はどう思う?
なかなか本音を出さねえ喰わせ者だが。
まさか巡礼に参加するなんてよ。
傍観者なら兎も角…。
もう少しからかってやるべきだったかね。
[イアンから敵意は感じなかったが―――。
彼の真意を少し測りかねているようだった。]
――そう言えば、「宿題」は解けたか?
「ヘクター」。
[ 触れられたくない話題から話を逸らすように、彼は数日前の話()を切り出した。]
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[程なく、ポットにお茶を入れて戻る。]
あれ、テッドいつの間に?いらっしゃい。
[新しい来客にきょとんとしながらも、笑顔で迎える。]
(188) 2010/08/07(Sat) 15時半頃
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復讐…。
[かつて出された「宿題」への答えを、
ぽつ、と口にする。]
復讐…か?
殺された同胞への復讐……。
人の子への…。
それとも森を捨てた同族への…?
[同胞の真意が理解できない。
人の子へ対する怒り
―少なくともヘクターは大きな怒りを抱いていた―
ではなく、なにか別の目的が?]
不正解だ。「ヘクター」。
[ つれない回答が返ってくる。]
答えは、「同属もまた人間と大して変わりはなかった」だ。
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