162 絶望と後悔と懺悔と
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[涼平の死を知り、袖を掴む指に力が籠る。
その指は袖を離れ、 明之進の冷たい手を包み込むと、 何も言わず手の甲を摩った。
そして告げた、願い。
断られても、握った手を離しはしない。]
折れないよ。 明ちゃんがいてくれたら、ボクはまだ戦える。
ボクはずっと後悔して来たんだ。 五年前、ボクがもっとしっかりしていれば 明ちゃんはボクを庇う必要もなくて、 傷付けられずに一緒に逃げれたかもしれない。
(2) 2014/02/19(Wed) 00時頃
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これはボクの贖いなんだ。
暖かい場所で優しい隊員に囲まれて 家族の苦しみを、痛みを知らずに生きて来たボクの。
始祖を斃すこと。 みんなを苦痛から解放すること。
それがボクの──望み。
(7) 2014/02/19(Wed) 00時半頃
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[言葉を続ける間、 絢矢の手はずっと明之進の手を握っていた。
幼い頃と同じ、心を籠めた指先で。]
だから、もし明ちゃんが一緒に来てくれなくても ボクは行くよ、一人でも。 安吾さんも、ジャニスさんも、円もキャロライナも、 隊員のみんなが、哀しい過去を背負って戦ってる。
ボクだけ途中で降りることなんて出来ない。
[その手が離れ──]
大丈夫。
ボクは折れない。 ──目の前に敵の在る限り。
(10) 2014/02/19(Wed) 00時半頃
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……リッキィ、円には……
[空気を伝って、違和が流れてくる]
リッキィ?
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──うん。
[>>9頷いて白の軍服と、落ちた二つを拾う。
足を踏み出せば、 躯中駆け巡る容赦のない痛みに顔色を失くし 手は縋るように明之進の肘を掴んだ。]
(13) 2014/02/19(Wed) 00時半頃
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それでこそ、私の傍に仕えるに相応しい。
[その心に痛みが走るのか、空虚が広がるのか。
それともそれ以外の想いが埋めるのか。
周を贄とし、安吾の命も奪った零瑠に。
向けるのは何処までも冷酷な笑み]
……はい。
あなたが示す道もまた、正しい…。
[一歩、また一歩、鬼に成る。
『冀望』の通り。]
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……これ?
[拾った二つを掌に乗せて明之進の目の前に示す。]
これはキャロからの、贈り物。 零お兄ちゃんとまゆお姉ちゃんに 渡したかったんだって──…っ、
痛み止め、を──…
[痛みに一度声を途切れさせ、 呟いて帯から抜き出した薄いケースの中の 鎮痛剤のタブレットを噛み砕く。]
(16) 2014/02/19(Wed) 01時半頃
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全く…家畜の分際で手に負えんな。
人であった事を捨てさせても、人のままでも。
[未だ鬼の血に抗い、鬼からも異端となった周の聲が響く。
あれを飼い慣らせれば面白いだろうが、
孤独のうちに完全に狂い鬼になってしまうのも面白いだろう。
零瑠がどんな想いで彼を連れ、彼を同じ鬼へと望んだのか。
零瑠の予想と周の姿が願った通りなのかは知らないが。
あれを見る零瑠の顔を覗き込むのも愉しいだろう。
その為に少々鬼が犠牲になっても構いはしない]
己が身位、己で護れ。
[幾らか助けを求める聲も聴こえるが、
そんなもので心揺さぶられる筈も無い。
むしろ、弱者の悲鳴を嘲笑する]
私にも感じるぞ。
抗い続ける力、実に惜しいな。
人の心手放せば楽になると言うのに。
[誘いの声を掛けてはみたが、
この強固な意志の鬼は決して見失わないだろう。
純粋な迄のその想いは、例え全ての記憶を失っても
手放さないだろう、そんな確信めいた想いがあった]
私に手が届いた時は、お前が死ぬ時かもしれんな。
[周と言う鬼が死ぬのか、人が死ぬのか。
どちらにせよ、会うのを楽しみにしていると]
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──…、
[砕けたタブレットを嚥下し口許を覆う。 その僅かの間に明之進の様子が変わった。
嘔吐く風な明之進の肩に触れ 反対の手で背を撫でる──けれど]
だ、いじょうぶ?
[苦しげに呟かれた名を耳にすると 撫でる手は、止まる。]
──リッキィ? そうだ、リッキィは──
[どこ──?]
(32) 2014/02/19(Wed) 11時頃
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[その為には、安吾の死が必要。
何も迷うことはない。
安吾も『おまえを殺す』と、言うのだから。
それでも零れる涙は胸の内に。]
[鬼と人との残酷な現実。
それは実体験に基付くものか、それとも単に事例を見続けただけか。]
あ、りが たき、幸せ……
[分かっていたこと。この亀裂も、望んだこと。
拡がる空を新たに埋めるだけ。
それは、主の言葉。笑み。
満ちる幸せをそのままに、微笑む。
誓約。
願わくば言葉で。伝われば涙で。]
――あなたの一番の傍で共に歩み、
あなたを置いて死に逝く事もなく、
……『永久不変』で在りましょう。
やはりお前達は面白い。
[ジャニスには聴こえぬだろう、闇の嗤いが漏れた]
……リッキィ、僕が解る?
[血を通じて呼び掛ける。
解るなら、おおよその方角さえ掴めれば、
いずれは相手の場所に行き着く事が出来る。]
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[袖を引かれ歩き出す。]
──…、待って。
[倉庫を出た所で一度明之進を止め 入り口横の壁にくないで印を残した。
隊員の間で使われるサイン。 意味は──『リカルダを探す』。]
(68) 2014/02/19(Wed) 23時半頃
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[恨みも憎しみも誇りも悲しみも。
此処で終わりにしようと、語る。
城の中で、まともに会話が出来たのは自分達『お気に入り』と、主とホリーぐらい。他の吸血鬼は表面だけ。
話を聞けば、皆が一笑するだろう。]
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[倉庫で飲んだ鎮痛剤は即効性のものを一列分。 ──服用の効果は間もなく出るだろう。
無理をするなと言う明之進に頷いて 肩を借りて歩き出す。
光の当たる範囲に踏み入る前には 明之進へとキャロライナの軍服を差し出した。]
これ、着て。
これを着てボクと一緒にいれば 遠目には鬼だとは気づかれないはずだから。
ごめん、ね。 薬が効いたら、自分で走れる、から。
(77) 2014/02/20(Thu) 00時頃
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………、明にーさん、
[僕は霧みたいにかすれた声でにーさんの名前を呼ぶ。]
僕、……だめ、だった。やりたいように、できなかった。
[目蓋を閉じた緋の世界、
己の心は悲鳴を上げたわけではない。
ただ揺らがぬ水面は千々に乱れて、
焦がれるような切望と行き場の無い諦念と、
暖かな底なし沼に沈むよう。
絶望を覚えるほどの希望は初めから無かった、
後悔を覚えるには幸福を感じすぎた。]
[父の居場所を問われた、
その黄金を手探りで探るように、
緋い闇の中にある]
[恐怖で縛ることのない『管理』であればどうだろう。
思い思いに自由に過ごせば良い。
気紛れに戯れ死んだとしても、それは鬼だけのせいではない。
人と人とでも感情のまま、或は衝動的に、殺し合うではないか。
全ての人間ではなく、人から堕ちた身なら?
主の命ひとつで、呆気なく崩れるとしても。
夢物語。絵空事。
それでも。請わずには居られない。]
……え――
[呼吸の音ですら、掻き消してしまいそうな位の小ささで、
届いた声は泣いているのか、と思う]
どういう……こと?
[円の名前を言っていたから、彼女には会ったのだと。
円と何かあったのか。あるいは]
円に、何かあったの?
[ただ横に在るだけでは駄目だ。
ただ従い仕えるだけでは駄目だ――とも、思う。
時にはぐっと『負けない』で。
……居られたら。]
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──。
[寒くはないかの問いを 聞こえていないかのように前を向いたまま]
リッキィは近い?
[問う。
戦っていれば寒くはない──のだ。 だから──今寒いのは己の不甲斐なさの証。
それ以上に、 目的遂行の為の最善を──選ぶ。
目的とは始祖の討伐。 その為に、一刻も早くリカルダと合流し、 安吾とジャニスの応援に行かなければ──。]
(85) 2014/02/20(Thu) 00時頃
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