112 燐火硝子に人狼の影.
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[そう。「この手で」殺すために。]
――――…
[獣たちを狩る人間の集まりと。
かの少女の母を殺めたであろう人々と。
その少年――サリスの母を殺めた人々と。
同じ手は使うまい。使ってやるまい。それが、傷跡残る男のしがらみ。
あぁ―――それは、あまりにも、甘かった。]
――…。
[吐息のあとに流れる長い空白]
今宵はホレーショ―が、自警団のもとに。
[短い、知らせ。
それはサリスがミドルの名を呼ぶ前後に齎される]
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[狼の耳に、男の囁き>>8は聞こえたか。 聞こえていたとしても、まだその真意を捉えてはおらず。
扉が開き、少女を庇うように立つシーシャ>>11は、 赤き声のみでの、獣としての名を紡いだ。 その上で、「説得」が失敗に終わった事を告げる違和感に、 わずかに眉を潜め。
どこか焦りを帯びたようにこちらへと詰め寄る足に、 獣としての本能が警告を鳴らした。]
そうですか。 それは残念です。
[どの選択肢も選ばないならば、 こちらが少女に用意する結末はひとつで。
謝罪は不要と声を返すより先に、首へと伸ばされる、腕>>12。]
(14) 緋灯 2013/02/08(Fri) 23時頃
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[本質は完全には重ならずとも、 同じ声を共にする者として、気を赦していたからか。 回避は遅れ、男の爪先が首の皮膚へと。]
――――っ
[瞬時、僅かにぶれ、鈍ったその動きに。 逃れるように床を蹴って、跳ぶように距離を取った。
ちり、と爪が掠めた首筋に痛みが走る。 喉元を狙うように、赤い筋ができていた。]
どういうつもりですか?
[問いかけるも、その声は警戒を多分に含み。]
(15) 緋灯 2013/02/08(Fri) 23時頃
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あなたもあたしの邪魔をするんですね。
[眼鏡の奥の瞳は鋭く、細く。 わずかに前傾姿勢を取りつつ、隠していた牙を顕に。
少女の姿をした人狼は、少し前まで 「サリス」と親しみを込めて呼んでいた相手を、 すでに「敵」として認識していた。]
(16) 緋灯 2013/02/08(Fri) 23時頃
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リヒトさん。
あなたのお気に入り、
――場合によっては、殺します。
[リヒトへと告げる声は、
同時にサリスへの宣告ともなった。]
横取りされたくないのであれば、お早めに。
仲違いでもしたかい?
[ミドルの聲に常と変わらぬ様子で問う。
彼女の意志を聞けど、焦る様子はない。
サリスが人間の娘を選ぶ未来は想定の範囲内]
ええ、そんなところです。
……止めないんですね?
[あの時は冗談の上ではあったものの、
彼は自分の獲物だと言っていたというのに。
とはいえ、サリスがこちらを殺しにくるのなら。
たとえ止められたとしても、聞くつもりはなかっただろう。]
そうか。
困ったものだね。
[ミドルの応えに漏らす嘆息。
問いかける聲にはいくらか考え]
――…止める止めない以前に
私の意志はもう伝えてあるからね。
[所有権を主張する軽口。
それを知った上で脅かすならば関係は一変する]
わかりました。
[応えは簡潔。
場合によっては同胞と対立する事も推測できたが。
サリスの出方によっては、それもまた止むをえないだろう。]
――…嗚呼。
[ミドルに短い応えを向ける。
彼女を同胞であると認識している。
共同戦線といったように仲間であるとも。
けれど、これからの時間を共に過ごす事は
彼女も範疇にないだろうしリヒトも考えてはいない。
何れ去りゆく存在を留める術などもたない。
力をもって制するほかは知らなかった]
[確かに聞こえていた。一人の男のその名前。
それが意味するのは、此処にはもう人間の少女と男と、人狼の少女と男しか残されて居ないということ。
――男がたったひとりで刃向おうとする、その人狼たちのこえが聞こえる。
今まさに少女の人狼に害を為さんとするサリスは、ミドルが告げたその言葉に、自身への宣告が含まれていることを覚っていた。
それだけなら、ただ、何も言わずに聞いただけだった。]
なにを。 いまさら、
[リヒトの「お気に入り」。
そうも告げたミドルに返す、そのうつくしい獣のこえ。
サリスのこえは、震えることなく。けれど、零れていた。]
あァ。あんたは。
慣れたんだろ。ひとり、に。
[全てを、メアリーをも喰らい尽くすと告げてきた男の。
その「意志」ということば聞きながら、また、短く零す。]
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ええ、そうですね。
[少女を庇うように立ち、こちらを睨みつける男>>20。 正面からぶつける目は、獣のものへと変化していた。
牙は太く、爪は長く鋭く。 髪と同じ色の体毛が表皮を薄く覆い、 獣の耳が髪の隙間から現れる。]
――――る、
[邪魔だとばかりに眼鏡を床へと払い落とし。 完全なる獣へと変わる手前の姿で、 威嚇の意を込めて、獣は低く喉を鳴らした。]
(23) 緋灯 2013/02/09(Sat) 00時頃
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慣れたよ。
同じになる事を望んだサリスが
同じになる事は無かったと知ったあの時に。
[サリスの聲に、クツと笑いながら言葉を返す。
メアリーを喰らう事を告げたあの時、
サリスがメアリーを選ぶなら
彼が生きる為に殺されてやっても良いかもしれないと思った。
別の選択を心の何処かで望む気持ちはあったのだけれど
矜持の高い獣は、言葉になどしない]
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[男がこちらへと向かってくるようならば、 その喉元へと牙を、爪を向け返り撃つつもりだった。 腰を引き、膝に力をためる。
しかし、男は足を、手を獣へ向けることはなく>>25、 背を向け少女と共に走り出した。>>26。]
逃げられや、しないのに。
[未だここは檻としての体を成している。 走り去る二人の背を眺め。 ゆっくりと歩き出した。]
(28) 緋灯 2013/02/09(Sat) 00時半頃
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は。
そりゃ、良かった、わ。 あァ、同じに、なんか……
[痛みで鈍った感覚の中。
このこえの主がより近くに居たことに、その時、気づかなかった。]
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[追いつけば、すでに彼らは対峙していた。>>27>>29 少し距離を置きながらも、 位置として、退路を断つように道を塞ぐ形となった。]
…………。
[震えてばかりいると思った少女は、 人ならざる存在を前にして凛とした声を張る。>>31
誰かのために命を捨てる。 その愚かさに胸がざわめき、目を細め。 少女の、同胞の、男の声を静かに聞くだろう。
――その感情が羨みと、未熟な獣は未だ理解していない。]
(36) 緋灯 2013/02/09(Sat) 01時頃
|
――…ならずとも、構わない。
私はあの日、人間であった「サリス」に出会い
心惹かれたのだから、な。
[クツ、とまた笑みが零れる]
――…サリス。
苦しくないように、と彼女は言っているが。
彼女の望む安らかな死を与えるか
光を失い、声を失い、腕を失い――…
果てぬ苦しみを負わせて生かすか。
好きな方を選ぶが良い。
何、だよ、
それなのに、「おなじに」、とか言いやがって、た、とか。
っつか、メアリーに、言ったばっかじゃ、ねェ、か、今、
人間の食事と同じ、って、
なのに、ひかれた、と か、
[彼はおそらくグロリアに対しても、「おなじ」ならぬものでありながら、妹として愛していたのだろうと思う。
けれど、己は?心惹かれた、とは―――。
取り留めのない言葉は、戸惑いの表れ。]
なに、笑ってん、だよ……、
「おなじに」と望まねば――…
何れ壊してしまうから。
[人間と人狼は共存出来ないと思う。
飢えをやり過ごす術を知らず生きてきた]
人間は、食事と、同じだと思っている。
生きるために、必要な糧。
けれど、あの日、あの夜――…
「サリス」と名乗ったあの存在を消すのは惜しいと思った。
獲物を見逃したのは、一度きり。
私の姿を見て、生き延び、再び出会ったのは
「サリス」だけ――。
[妹にさえ見せたことのない姿。
それを知る人間で生きているのはただひとりきり]
……………………、
ばか。
決まってン、だろ。
あの子の、メアリーの、願う、通りに、しろ 。
――…、サリス。
お前も、十分、莫迦だと思うぞ。
[彼の言葉を否定はしない、返し]
――…本当に、良いのだな?
[再度、サリスに尋ねる。
微笑む少女の向こうに彼の姿を翡翠はとらえ]
[その時響いたこえには、直ぐには何も答えなかった。
未だ捉えきれていない、受け入れ切れていない、と言うべきだったかもしれない。
寄せる思いは、一人の少女の生死を分かつ方へと。]
あァ。
どうせオレは、馬鹿で、結構。
[その答えから、リヒトは約を違えぬだろうと。
過った安堵は安堵のようでいて、それでもなお痛み滲むもの。]
……………………、
[今一度続く尋ねには、幾許かの間が空き。]
良い、よ。
苦しませてまで、生か、し、て……なんざ、でき、ねェ。
あの子が、願った、通り、に、して、くれ。
[生きろ、と。そうとばかり人に言ってきた男は。
今ここで、今度こそ、その死を受け入れようとした。]
――…嗚呼。
[翡翠は彼を見詰めたまま
短い了承の言葉をサリスへと向けた。]
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