52 薔薇恋獄
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[ 灯りが消えた、暗闇の中で ]
『逃げて』
『お願い』
[ 搾り出すような、声がする ]
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[謝罪の言葉を紡ぐ耀と珀に、ゆるゆると首を振り]
何よりですよ、大事無いようで。
耀君、少し横になりますか? それとも、何か食べておきますか?
[もし暫く眠るようであれば、自分は食事を後回しにしてついていようと思ったが。 その矢先、不意に周囲が暗くなった]
あ……。
(0) 2011/05/18(Wed) 00時頃
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日向っ!?
[暗闇のなか、搾り出すような儚い声。
胸の痛みは、一層ひどくなるけれど、何も見えなくて]
お前も、百瀬探しに行かないの?
すっげー雨だし。
[出てゆく石神井を見て、土橋にも声をかけてみたり]
[まさか。
そんなわけがない。
けれど、胸の痛みは治まらない]
日向、……蛍紫……っ!
いきますよ、もちろん。
[何を当然、といった表情になった]
はいはい、はぐれないよーにね。
[ついでに一緒にフロでも入ったら、とは言わなかった]
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[明かりはすぐについたけれど、代わりに感じられたのは、今までここになかったはずの薔薇の香り。 そして周囲の喧噪から、大須の姿が忽然と消えたことを知る]
大須君、鳴瀬先生達を呼びに行ったんじゃないんですか……?
え? 違う……?
[耀の様子を伺い、立てそうならば近くの椅子へと着席を促し]
本当に、さっきまでそこにいたんですか?
[再度、皆に確認してみる]
(19) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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……何があったんだよ、日向ぁっ!
[彼女の姿が在った場所には、ただ雨粒が打ち付けるだけで。
生きている者は当然、死んだ者の姿も見えず]
はい!
[元気よく答え、外へと。
…もし、言われていたらジト目で見たかもしれない。]
[元気の良い反応に、土橋はわんこみたいで可愛いなーと思った]
俺も、どーにかなる……のかなあ。
ウーン。
[多分、ワンコならきっとハスキー犬だと思われる。]
[そこだと判ったのは、初めに日向と会った場所だから。]
楓馬……。
[苗字でなく、名を呼んだことは、きっと無意識に。]
[犬好きなので、帰ってきたら思い切りナデナデするつもり]
……。
[濡れて雫の滴る前髪の下から、虚ろげな眼差しが返る。
けい、と呼ぶのは、喉が引き攣って上手く声にならず、くちびるの形だけ]
[虚ろな眼差しに、眉間に皺が寄った。
己は視えて聴こえるだけで、同調はしないから。
だから、彼と日向が抱える苦しみは判らない。]
………すまん。
耀の時も傍にいてやれなくて。
日向のことも……
切欠は、おそらく暁様とやらなんだろうが。
暁様……とやらの霊は、俺には見えてないから
何がなんだかで。
[起こす為に手を差しのべながら、ぽつりと告げる言の葉。]
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えーっと、みんな、落ち着いて……。
[自分も、大須達を探しに行くべきか。 それともここに留まるべきか。 大広間に残る生徒達をどうするか……。
こんな時、鳴海先生ならどんな指示を出すのだろう]
先生、早く戻ってきてくださいよ……。
[テーブルに手をかけたまま、窓の外を見て、少し情けない声を漏らした]
(35) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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あ、鳴瀬先生!
[鳴瀬の声が聞こえると、安堵の表情を浮かべて振り返り]
……良かった。
あのですね、耀の方は、ひとまずもう大丈夫だとは思うんですけど。 その、つい先程、停電がありまして。
大須の姿が、急に見えなくなってしまって、どうしようかと……。
(40) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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甲斐君ですか? いえ、彼はまだ……。
[首を軽く左右に振る]
石神井君達が呼びに行っている筈なんですけれど。 先生、心当たりありませんか?
(41) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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[蘭香のことも、――日向のことも。
暁様、という誰かのことは分からないが、ゆるゆる首を振った]
……謝るのは、オレ。
居たのに、分かるのに、……何もっ、出来なくて。
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あ、はい。 すみません。
[最上の声に一瞬驚くも、確かに自分が落ち着かなくてはどうにもならない。 耀の傍に歩み寄ると、立てるかどうか様子を伺う]
はい、大須君が……。 ……先生?
[鳴瀬の顔色が急変するのを見ると、また不安げな表情を浮かべそうになった。 それではいけないと、軽く首を振り]
甲斐君、一緒だったんですか。 ならそのうち、ここに来るんでしょうか……。
[またちらりと、耀を見る]
(55) 2011/05/18(Wed) 01時半頃
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そうですね。 とにかく、私の部屋で少し横にさせておきます。
[耀の正面に回り込み]
……立てますか?
[そう訊ね、立てるようであれば肩だけを貸す。 もしも立てないようならば、かなり無理はあるが、背負っていくしかないだろう]
あ……この雨ですし、停電もありましたから。 他にも、怪我をした人がいたら、早めに治療に来てくださいって。 これ、みんなにも伝えておいてくださいね。
(57) 2011/05/18(Wed) 01時半頃
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[耀を連れて大広間を出る前に、鳴瀬の前で一旦足を止め]
助かりました。 私では、こういう時に的確な指示は出せませんから……。 あと、最上にも……。
[そして軽く頭を下げてから、部屋に戻った**]
(63) 2011/05/18(Wed) 01時半頃
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―先の話・栖津井&浜那須の部屋―
栖津井先生。またすり傷作ってしまいましたー
…あと、薔薇の棘、刺さってしまいました
[部屋の中に耀はまだ横になっているだろうか。部屋の扉を叩き、返事を待たずに中に入る]
……あれ、先生居ない?
[辺りを見回せば、布団に寝かしつけられている耀独り。胸の辺りがゆっくり上下しているので、静かに眠っているのだろう。
先輩や先生からはどれぐらいのことを教えて貰ったのか]
………そうだ
[ふと思い付いて。耀の傍に寄ると、耳元でそっと名を囁いた。
さて、彼は『誰』と勘違いしてくれるのだろう]
[じいと眠る顔を見ていると、不意に母の顔と重なった。驚いて目を擦り、改める。
どうして…。
手を伸ばして、顔にかかる髪を横に払う。見える火傷の痕に息を飲んだ]
―3年前のある日―
[TVのニュースを見ていた母が、小さく悲鳴を上げた。
何事かと、手を止めてTV画面を見ると、どうやら火事で家が全焼し、一家族が死亡と重傷だという]
…ふぅん
[『ただのニュース』だと思い、再び宿題のプリントに鉛筆を走らせる。暫くすると、母の押し黙った嗚咽が聞えてきた]
奏音さん、どうしたの?
[心配になって声をかけると、母に強く強く抱き締められた。しがみつかれたというのが正しいのやも知れぬ]
『…調音ちゃん、調音ちゃん……。死んじゃった。ママの…従姉妹が、死んじゃったの…』
[震える背を撫でることしか出来なくて]
…苦しかっただろうね
[そんな事しか。言えなかった]
―時は流れる―
[そうして。火事のニュースを見る度に、母は呟く]
『ヨーカちゃん、無事かなぁ…』
[先の火事で、唯一生き残ったという従姉妹の子供の名を呟く]
『心配だけど、連絡できる訳じゃないしね…』
大丈夫だよ。奏音さんがこんなにも心配しているんだから
きっと元気に過ごしているよ
『うん…。そうだね。そうだと…良いね』
[そうして決まって母は、調音を抱き締める。
直接触れられない代わりに。
『ヨーカちゃん』の代わりに**]
―現在―
[火傷の痕。『ランカ』という名前。微かに見える母の面影]
…はんっ
まさか
[打ち消した。髪に頬に触れる手は、何故だか止まらない。
起きぬ気配にもう一度、耳に唇寄せて]
ら ん か
[*名を呼んだ*]
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