204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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ーーーーーー…………
[夢も見ないほど 懇々と眠り込む
時折 何かを呼ぶように 小さく唇*震えた*]
フィリップ………
[血塗れた姿に、瞳を細める。
なにもできなかったことを理解して。
ただ、痛い]
―――――っ
[消せない、血の匂い。
眠りながらも、うずくものを、かかえていた*]
[階段で、フランシスと合った折。
彼の表情は図星そのものだった。
そうだろう。
うちの子でなくて良かったと、思うのは当然だ。
出逢ったばかりの存在と、長年共にした存在と。
守ってやれるのは、己の存在だけ。]
[壁の向こうで起きたこと。たったひとつの、壁の向こうで。止めようと思えば止められたことだ。
愛しい子の血肉を啜った。
2つのことをバーナバスが知ったらどう思うだろう。
純粋無垢でいられた少年は、泣いたまま。]
(ノックスの「よかったね」という
唇の動きが忘れられない。
彼も、彼で、同行者を心底大切に思っているに相違ない。
おれの、それと。
形は違うのかもしれないが)
(――守れるのは自分の大切なもの、だけ。
もし、もしも、衝動が
全てを食らうほどに強かったとしても。
何もかもを犠牲にしなければならないとしても。
生きていてほしいと思うのは――本当だ)
………………ラルフ
[痛い 何が痛いのか
誰が痛いのか わからない
現実に聞いた言葉 ほろ と涙がこぼれる
けれど現実には零れない
この 涙の意味は なんだろう?]
ーーーー…………うん
[何か言おうとした 何も言えなかった
完全に 緊張の糸が 途切れて
微か 笑いたかったのだけれど
笑えたのかは 彼にはわからない]
[まだ 朝の早い頃
ラルフが懇々と眠る頃 ふっと上を見る
そこは ただの天井
その先にいるだろう姿の]
ーーーーーラルフ……大丈夫?
[静かな波のない思考が案ずる]
[目には見えない涙。
こぼれたそれを拭うことはできず。
その夜は結局何もいえぬまま。
かすかな、笑みともいえぬものに、笑みを返したことを思い返す]
――
[朝になって、フィリップを思う。
眠っているなら寝かせておきたいと。
声をかけるかどうか、ためらう]
[フィリップの案じる声は、眠っていて届かなかったから。
いま、彼が起きているかはわからないけれど]
……フィリップ。
大丈夫かな……
[ぽつり、呟き。
最後に見た、血塗れの姿を思い出す]
ーー俺なら 大丈夫だよ……生きてる
…………心配かけて ごめんね
[感じた 案じる気持ちに
静かな声がかえる]
ラルフこそ 大丈夫?
そっか、よかった……
[心から安堵する]
大丈夫……そこまで、ひどくなかったから。
――――フランシスに、気づかれたと、思う……
[感じる安堵に やはり暖かい]
ーーーーそう………
[昨日 離れ際 思ったこと
やはり知られた ……当然だと思う]
……俺は……みんなより 山や森で生きてける
少しでも……吹雪が小康じょうたいになったら
すぐ ここから離れるから
あと少し 子供達を 保護して……て
フランシスに伝えてもらえる かな?
うん……
――え。
[驚き、ゆるりと首をかしげる気配]
……フィリップだけが、でていくことは、ないよ……
フランシスには、俺が、ちゃんというし……
雪の中 数少ない獲物
仕留める技術が ラルフにはあるの?
[ふっ と優しい思いに 自嘲の笑みをこぼして]
フランシスだって 許すわけないよ…………
自分の可愛い子が 食われるかもしれないんだ
う、……それは、ない、けど……
[問われる言葉に、ひるむ。
フィリップに教えてもらった弓は、まだ使い物になるわけもなく]
うう……
でも、やだよ……
フィリップだけ追い出すとか。
声、聞こえなくなるとか。
――……やだ。
[かなうはずもない、わがままがこぼれる]
――こんなに、だれかと、関わること、なかったし。
気になるとおもったひとからは、すぐに離れてた……
なのに――――
[ふ、と色素の薄い姿を思い返す。
ビスケット色を、あの、霜の青さを]
…………俺だって……嫌だよ……
ラルフの声が聞こえないのは
……ラルフに もう 会えないのは…………
けど 俺は どうしようもなく 獣で
衝動にも勝てない 人と生きていけない
ラルフは 衝動にも勝てて
人と生きる生業 大切にしてくれる保護者がいて
ーーーーねえ…… 聞き分けて……
[零れる我儘は 嬉しい けれど かなしい
どうしようもなく 別たれた 同じ獣だけれど
別の 獣なのだと]
…………大丈夫 ラルフなら
きっと 俺のこと
すぐに忘れることができるよ
[と 言って 笑った ]
[ 泣いた ]
………………ーーー
[ラルフが誰かを 思う
あの人は 嫌いだけど そう
そんな風に 誰かを思えるなら すぐ 忘れられる]
[言葉は 実感をともなって]
博徒 プリシラは、メモを貼った。
2014/11/19(Wed) 20時半頃
いやだ……
フィリップに、もう会えないとか……そんなのやだ……
[並べられる違いに、それでも。
フィリップだって、なんとかなるんじゃないかとか。
ゆめをみている]
獣なのはフィリップだけじゃない、し……
[嬉しいと悲しい。
初めて声がつながる相手だから、ただ、離れたくないと]
無理だよ。
フィリップを忘れるなんて、できないよ……
ーーー初めて 同じ 獣に会えて嬉しかったから
きっと 君はそう思うんだ
…………ラルフ
君には……衝動を覚える相手がいる
俺みたいに 誰にでも
覚えるわけではない それを
今は まだ 衝動を 抑えられなくても
いつか 衝動を抑える術を 覚える
ーーーその時 いまの人ではなくても
衝動を覚えるほどの人と
一緒になることが君はできる
ーーー確かに こうやって
思いをそのまま分かち合えない
その分は その人と話して
言葉でわかちあえばいい
[言語化して 思うだけで悲しい
けれど 子供に言い聞かせるように
ゆっくりと 思考する そうすれば届くから]
…………だから ーーー
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[目が覚めたのは、ノックの音がする>>86少し前。 寝る前に言った我侭を思い出し、今更恥ずかしくなった。 普段より接触が多い気がして、恥ずかしい反面、嬉しいと思うのも事実だ。
しかし、ノックと共に扉の向こうから聞こえてきた声>>87に、胸がざわついた。 そのざわつきの名前を知らないまま、胸を押さえる。]
……風呂。行ってくる。
[バーナバスが居ればそう告げて、荷物から着替えを出す。 風呂に入れば、この胸のざわつきもすっきりすると、そう思っただけ。
二人が一緒にいるところを、見たくないわけじゃない。 そう自分に言い聞かせて唇を噛む。]
(117) 2014/11/19(Wed) 21時頃
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