276 ─五月、薔薇の木の下で。
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─調理室─
[ 聖体拝領を求めに誰かが来ていた(>>0:423)とか、食堂で待つ人がいた(>>0:422)とか しっかりと食事を確保されるかわりに(>>8)悪くなってしまった食堂の空気だとか。 そういうものは届かないのに、やけにピンと何かが張り詰めている。
何を思うのか(>>11)もわからない伏せられた顔が、余裕の無さそうな(>>12)顔が 近く、射干玉(俺)を捉える。 ]
…………。
[ 無言は、時として刃となる。 口角を上げ、唇をしならせ。 主の血を模倣するかのような香りが漂う。 ]
(35) 2018/05/17(Thu) 01時頃
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無駄に? あーうん、無駄にはしないよ。食う食う。
[ 途中でやはり途切れる、なにか言い訳めいた言葉も いつもの調子で笑って聞いていたけれど。 もう一度繋がる視線には、肩をひとつ竦めて見せて。 ]
美味いかどうかは、食ってみなきゃわからんよ。
[ 世辞など口にする性質じゃないことくらい 少し喋れば誰しもがわかることだろう。 勿論「パンが、ね」と小さく付け足した。 ]
(36) 2018/05/17(Thu) 01時頃
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さて、キミちょっと顔色悪いから 自力で歩けるなら、医務室か自室で休むかしてなよ。
俺が離れれば元に戻るってんなら どっかいきますけどもね?
[ 自力で動くことさえ出来ないのなら、肩くらいは貸すつもりだが そうでないなら俺はまず、このパンを切るなり 或いは忠義のある可愛い後輩が取っておいてくれただろう食料目当てに 或いは道中でモリスに会うなら、それもまたラッキー てなところで、食堂にいこうかと思っているんだが。 ]*
(37) 2018/05/17(Thu) 01時頃
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[ 華奢でも病弱そうでもないがために(>>12) 或いは俺の知る由もないが、染み付いた匂いが疎まれているからか 介助する、という選択肢を選ばなかったお話。 ]
パン捏ねるのもいいけど、もう夜も更けてきたんだし。 いいとこで寝なよ?
と、そうそう。
名前呼んでくれたのはちょっと嬉しかったわ。 なんか嫌われてるっぽかったからさ、俺。
[ しかしこれっぽっちも嫌ではなさそうに、笑う。 前にも謂ったけど、愛情の裏返しが憎悪とは限らない。 好きの反対は嫌いじゃない。 ]
(49) 2018/05/17(Thu) 06時頃
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[ だからあの時(>>20)だって。 いっちゃんの声のトーンが微妙に変わったことも 張り付いたような作り笑顔も 否定しようとして謂い淀んだ言の葉も
なにも気付かないフリを完璧にこなして 何かの狭間に揺れるいっちゃんを ただ、微笑んで見ていた。
だって嫌われることは、なにも悪いことじゃない。 好かれる事がいいこととも、限らない。 ]
(50) 2018/05/17(Thu) 06時頃
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[ この時は。 咲く花に拘りを見せる、可憐な花でも その奥を覗きたくなる、八重咲きの花でも 雨の日にまで佇む、透き通る花でも 噎せ返るように咲く、赤い赤い薔薇の花でも 他のどんな花でもなく。
イアン・シュヴァルベという一輪を見ていた。
困惑、動揺、平然、虚栄、体裁、本心、虚偽、本音。 そんな養分を吸って、見(魅)せるかんばせに 俺はただただ、微笑んでいた。 野暮ったらしく、この感情につける名があるとすればそれは ──ああ、でもまだ秘密にしておかなければ。 ]
(51) 2018/05/17(Thu) 06時頃
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[ しかし今見る花は 怯えたように震える、花。 ]
んじゃね。
[ 次があるのだろうか。 ケヴィンがこんな反応であれば、更に避けられてしまう気もするが。
またこんな姿が見れたらいいなあとか。
趣味の悪いことばかりを考えながら ひらり手を振り、調理室を後にした。 ]*
(52) 2018/05/17(Thu) 06時頃
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──そうそう、もうひとつ。
薔薇には毒があるからね。
気をつけな?
[ 甘い、あまあい囁きが落ちるのは
離れるよりも、ほんの少し前。
それは一瞬のことで
およそ避ける暇も無かったろう。
囁く耳元に押し当てるのは、薄い唇。
きっとそれは、呪いのような薔薇の棘。 ]**
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─食堂─
[ 飄々と現れるのは、さっきまでいろんな意味で賑やかだっただろう場所。 一人ポツンと在るのはモリスで(>>34) 探していたことも待たせていたことも知らない俺は よー、といつもの様に土色に染まった手を見せた。 ]
どしたの、はらぺこさん? ってわけじゃなさそうね。
[ だって彼の前にはいろんなもの(>>8)が。 腹が減ってたら食べるでしょ普通。
遠慮もなしに横に座って 窓の外から差し込む月光を見る。 ]
(53) 2018/05/17(Thu) 06時頃
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あれ、なんか天気よくなってら。 風も止んだんかね。
さっきまで凄かったじゃん? 薔薇が吹っ飛んでいきそうでさあ。 保護するための布とかないかなーって。 丁度キミを探してたんだけど。
[ 布、いらなくなったみたい。 まあやらなくていい労働がなくなったのなら万々歳だ。 先程までの食堂の空気を知らない俺は、無神経にも一言。 ]*
あ、で? 何してたの?
(54) 2018/05/17(Thu) 06時頃
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ユージンは、フェルゼの髪みたいな月明かりだなー、とか独り言*
2018/05/17(Thu) 06時半頃
[ 気を抜けばくらりと酔いそうなほどの、薔薇の香り。 ]
[ 濃醇なそれを、今はまだ隣席から香るものと、認識したまま。 ]
[ 掠め逝く薔薇の香は、
大事な血管の上に、 ちぃさな棘を残し、
気を付けるもなにも、
─── 寧ろ 甘受するかのよう。 ]
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─食堂─
[ 無様にへたりこむ姿を(>>82)振り向き見ることもなく。 別れを告げて歩き出す、この足が引き返すこともない。 ただ手には投げて寄越された、主の身体ひとつ。 分け与えられたそれを抱えて、ついた食堂(>>75)。 ]
あら、俺が探されるなんて珍っし。 そりゃそうか。中庭に居ねーもんな。
[ 改めて語られる今までのあらすじ(>>77)を聞いては ふんふんと相槌を返しながら、パン切り包丁を適当に漁ってきて。 ざくざく切り分けたら、一片をモリスに向けた。 ]
(88) 2018/05/17(Thu) 21時頃
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マークは後で様子見に行くわ、礼も兼ねて。 んで、シーツは了解ー。次の雨んときは使う。 それから、えーと枝?
[ 適当にカップを探し、適当にサイダー壜の王冠をあけ 適当に注いだらそのカップをモリスの前に。 炭酸がぱちぱちと弾け、爽やかな音を奏でる。 どこから落ちたのか、帽子にでも乗っていたのか。 薔薇の花弁が一枚カップの中に浮かぶ。 ]
あるにはあるけど、まだしけってんのよね。 彫るなら乾いた木の方がいんでないの?
[ 切ったばかりのみずみずしい枝や材木よりも、と思うが 芸術に身を置かない俺の知識が正しいものかはわからない。 ]
(90) 2018/05/17(Thu) 21時半頃
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ユージンは、モリスに「俺の名前って呼びにくい?」と唐突に。
2018/05/17(Thu) 21時半頃
[ 弾ける炭酸の上に、浮かぶ薔薇。
濃く、色濃く、それは香る。
別の何かからかもしれない。
そして隣の男()からのものでもある。 ]
あ、どこに挟まってたのかね。
食用にも使う薔薇だし、そんまま食えるし。
彩りいいから、まあどーぞ?
待たせたお詫び?
[ コトリ、と。
薔薇の浮かぶサイダーが置かれる。
その水は、その蜜は。
きっと甘く、きっとちくりと痛い。
悪魔が呪いに使う、薔薇の棘のように。 ]
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つい今しがたまで居たのよ。 マークもいたし……そん時は元気っちゃ元気だったんだけどな?
[ 後輩の顔色を見落とすとは。 現金な後輩の霧散させた皮肉(>>94)も気付かず──謂われたところで気にもしないが── さっさとパンにありついてしまう姿を眺めながら壜を直接傾けた。 ]
じゃあ乾いたら持ってってやるよ。 またなんか彫んの?
[ その作品を手にしたことはないけれど。 技巧きかせた素晴らしい作品なのは知っているから。 誰かがリクエストでもしたのかね、とか。 眼鏡の一年か、絵描きの先生か。 もしくはよく一緒にみると勝手に思ってるいっちゃんか。 ]
(102) 2018/05/17(Thu) 22時頃
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や、なんかケヴィンに文句謂われたのさ。 そんな呼びにくい名前かね、と思って。
[ そうそう、そのパンはケヴィンの…なんて謂わなくてもわかるのだろうか。 パンを捏ねることを知ったのはついさっきで。 あんな風に見せる顔も、ひきつったような声も、茶色の瞳も。 初めて見たものばかりだった。 ]
半分、異国の血だからねぇ。 モリモリはいーじゃない、いじりやすくて。
[ わざと間違えて呼んでんのよ、俺は。 なんて悪びれもせずクスクス笑ったりもした。 こいつはこいつで、話しやすい奴だと思っている。 見た目は結構偏屈そうなのにな? ]
(105) 2018/05/17(Thu) 22時頃
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[ 主の身体の一部を、口に運ぶ。
食む、食むと租借は繰り返される。
しっとりとしたレーズンより強く
甘い薔薇の香りが、狂わせるように噎せ返り
動かぬ月が不気味に見下ろしている。
嗚呼。
こんな夜。
美しく咲く《花》を。 ]
[ この汚い手で触れ
この汚い指先で咲かせ
この汚い心で濡らし
この汚い唇で吸い上げ ]
[グラスのサイダーで口を湿せば、それは薔薇の蜜のよう。
濃密に甘くて、脳を痺れさせるような。
もう、隣人の香気だけではないとわかっていても、おかしいと思うには遅すぎた。
月は明るく。
《花》は鮮やかに。]
[ 悪魔の口から零れ落ちる甘美な詞。
誰も知らない。
この穢れた手が何のために花を咲かせるかを。
好きだから?
そんな簡単な理由じゃない。
花は美しく咲き。
散るよりも、枯れるよりも前に。
この手で手折るために。 ]
………なんて、モリスは考えたことない?
[ 射干玉の黒い点が、モリスを見る。
甘い毒を嚥下する喉()に、視線を這わせ。 ]
例えばだけどさ。
こうやってパンを食うみたいに。
誰かの喉に唇を這わせてみたいとか。
奪いたいとか。
壊したいとか。
[ フ、と。
いつもと変わらぬ──けれどいつもとは違う──表情で
帽子の鍔に触れて、笑った。 ]
[ 小夜啼鳥の囁きは、呪いの接吻を甘受した者へも
それは音のない、凪いだ風に乗り。
或いはざわざわと囁く、中庭の薔薇の音となり。
耳をすませば、すまさなくても。
きっと嫌にも、届くだろう。 ]
────なんて?
[ とろり、とろりと、毒が満ちる。 ]*
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そらなおさら心配だね。
[ 昼は暑くとも夜はまだ冷える。 特に庭でそのまま寝ちまうような奴だと知るからこそ。 いつも何か掘ってる、には違ぇねぇと笑う。 ]
ほら、俺嫌われてるかも? 土くせーし、きたねーし……
[ そこに何やら匂いにようやく気付いて。 ばばっと自分の腕や服に鼻先を押し付けたり── ]
(116) 2018/05/17(Thu) 23時頃
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えっ、ちょ、何もしかして俺汗臭い!?
[ いつも花の中に居るからか、嗅覚は少しばかり仕事をサボりぎみだ。 なんとなく薔薇の匂いはするが、誰かが窓を開けているのかもしれないし。 それより、汗臭くないかなんて気にするのも 腐ってもオトシゴロでありまして。 ]
あー、マークんとこ行く前にシャワーでも浴びたがいいか。
[ 立ち上がり、そろそろシャワー室にでも行くかと モリスには伝言と橋渡しの礼を伝えた。 動き出すならこちらに向かう足音と、きっと出会すだろうか。 ]*
(123) 2018/05/17(Thu) 23時頃
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