人狼議事


190 やどかりさまの、暇潰し

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ミナカタ! 今日がお前の命日だ!


[オレの祈りも、彼女の小さな呟きも。
 まるで嘲笑うかのように。


 意識は一瞬、鮮明な   ア カ イ ロ   を見せる。


 安曇ちゃんのグラスを握っていた時も、そうだった。
 そうだった事を、怖くて、口にしなかった。]


[だって、オレなんかが儀式の鍵だなんて。]


 ───…、…そ だろ。
 


[もはや自分の体が仮死状態である今、
 元に戻れる望みは薄かったが―――]


[オレが白馬の王子なら。
 倒れた姫を颯爽と助け出しに行くだろう。
 たとえ茨の道であろうと、何も顧みることなく。

 オレが魔法使いなら。
 身体と魂を繋ぎとめる魔法をかけに駆け出すだろう。
 走れば間に合う、そう信じて。

 オレが    なら。
 オレが    なら。
 オレが    なら。
 オレが    なら。

 嗚呼、ああ、唖々、アア。]


[ ───“オレ”は、いつだって物語に登場しない人物。 ]


[眉間に触れたとき()、重なった視線を思い出す。
 たった数秒もなかった、長い永い、それ。

 部屋を出て確かめにいく事も出来ない。

 透けた姿の誰かの声が。
 或いはどうしてだろう、俺の声のようにも聞こえる。
 紡がれる、紡がれる。


 『誰にも、届きやしないんだよ。』


 …───と。]


 
 
 
[  ────生き を吐いた。  ]
 
 
 


 ……ごめんね。

[折角、せっかく願ってくれていたのに。
 オレが触れなければ、きっと水は満たされていただろうに。
 井上さんの方を向いて、一言告げて。
 会長を見て、安曇ちゃんの姿の誰かを見て、シノを探して。]

 どうすれば、いいん、でしょうね。

[ゆっくりと、視界をめぐらせる。]


[塩なんて効き目がないと、会長や安曇ちゃんがからかっていた。
 清める効果も、守る効果もない、ただの食塩。
 それでも、そんな食塩を猫のように撫でて離さなかった姿が
 あまりにも愛らしかったから。

 ──その箱が握られたままだと、まだ知る由もなく。

 透けた姿が見えないのなら、きっと部屋の外だろう。
 王子でも魔法使いでもないオレに、迎えになど行けるはずもなく。]


 オレが、────…


[この怪奇現象という物語から“消えて”しまえば ──いい?]
 


[けれどその実、緩やかに眉は下がっている。]


 オレ一人、“消えた”ところで。

[オレが描く漫画の世界と変わらない。
 そこにオレは居ない。

 膜に阻まれた人差し指の事も
 どこかで鳴らした心の音も
 オレは何も、知れていないから。]





 『他の何者かになりたいと、一度は考えた事があるだろう。』
 
 
 


 白馬の王子に。
 魔法使いに。
 伝説の勇者に。


 杉山 恵に。
 井上 恵都に。
 月読 鈴に。
 菅原 紅子に。
 風祭 拓に。
 白戸 紫乃に。
 安曇 渚に。

 御名縣 宗一郎に。


 山田 雄一に。
 
 


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