73 ─深夜、薔薇の木の下で。
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……セレス……
[モリスとの会話でどんなことがあったとしても
口から一度だけ零れたものは、ルームメイトの名前。
愛しさと諦めとが入り混じったそれは、聞くものが聞けばひどくいらだちすらもたらしただろうが*]
えっ……
[モリスがズボンに手をかけようとした時に聞こえた言葉。]
セレストさんの事、忘れる気ねーだろ。
[モリスは不快感を露わにする。]
オレ、セレストさんにオレが何してたか、言ったんだよ。
そんとき、どんな顔してたか、わかってんのかよ。
凄く、動揺してた顔してた。
言葉は、平静を保ってたけど。
[モリスはまくし立てる。]
オレの話、聞いてたんだろ?
エリアス先輩、オレみたいになんなよ。甘えてんじゃねーよ。
マジムカつくわ。すげー、マジムカつく。
バイトだったんでしょう?
これもバイトのうちだったのに。
[実際、薔薇の精との話も端々しか覚えていない。
ただ、モリス自身が「汚い」といっていたことだけはしっかりと覚えている]
忘れる気がないとか…キミに言われることじゃ、ない…
[病気がちだったためか、生来弱弱しい精神は暫く眠る。
ただただ、癒しを求めるだけで。
自分からは何もしない。諦めているから。
何もできないと。
セレストの心中まではわからない。
けれど、少年はそれを知ろうともせずに*]
……レオ先輩、か。
[慌てふためいた様子のレオナルドを見て、モリスは何か思いついた様子を浮かべる。]
……いい事思いついた。
[負い目を感じていたモリスの中に隠されたかすかな魔性が目を覚ます。
それは、薔薇の香りが成す仕業なのか。]
何かムカつくし、ちょっと悪戯してみよーかね。
[微かな笑みが囁きとなって零れる。]
何する気?
[ふと乗ってきた気配に小首傾げ。
さっきなんだかんだと御高説たれた割にしょうもないこと考えているのだろうか
……何?どうしたの?
[ぐすっと鼻をすすりながら、やっと薔薇の声に気がついたよう。
何か喧嘩のようなやり取りを、うっすらと聴いた覚えがあるけれど……状況は理解してなくて。]
誰かに悪戯するんだってさ。
悪い子だね。
君達、薔薇の棘には気をつけないと……
[眠ってしまうよ?とはやはり言わない。
自分が直接受け取れれば一番良いのだけれど、
人の想いからも精気は得られるから]
[薔薇の精は珍しく訝しそうな顔をしてモリスの声を聞く。
しかし、普通の会話まで聞こえることはない*]
悪戯?
[何をする気なの?と、問うように鸚鵡返し。]
薔薇の棘……あの時、あの子痛そうだったなぁ。
[丁度、ヨーランダのことを思い出したところだったので
ぽつりと忠告に零した。]
[尋ねに答えはかえらなかっただろうか。
気まぐれに演奏を続けながら、ふっと思い出したと
歌うように告げる言の葉。]
そう言えば、オスカーがさ。
俺が薔薇に囚われてるなんて言うんだよー。
確かに、こうして2人と話しできるけど
囚われてるってことはないよねぇ?
[本当は、何か少し気がついているけれど。
見ない振りをするのは、いつもの癖で。]
薔薇に、捕らわれてる、かぁ。
案外、それ本当かもしれないスけどねぇ。こんな感じで話せているのは、確かに事実だし。
[あんまり奇跡とかは信じないけれど、今目の前にいないノックスと話せているのは、紛れも無い事実で。]
囚われてる……のかなぁ……。
[見ない振りをしようとして、
でもモリスの声はそれを赦してくれない。
いつか聴いた噂。
――深夜、薔薇の木の下で。]
だから、こんなに……
[途切れる言の葉。
無意識に見ない振りしていた、何かを炙るように
裡で火が燻ぶるのだろうか、と。]
……君、何する気なんだい。
あんまりこの子を虐めないでおくれ。
本当に壊れてしまうよ。
[別に自分は構わないけれど。
モリスが何をやらかそうとしているのかはわからない。
流れで、彼がエリアスになにか仕掛けようとしているのは何となく予想はつく]
薔薇ってお節介だよねー……。
[ぼそっと小さく呟きを落とした。
そのまま無意識に知らぬふりが出来ていれば、
恋心を自覚して直ぐに失恋なんてしなくて済んだのに
……とは、逆恨みだろうか。]
んー、でもモリス、ほんとに何する気?
[痛んだ心を誤魔化す為に、先程から何か画策してるらしい彼に問いかけてみる。]
なぁに、ちょっと悪戯するだけって言ったじゃないスか。
[何をするかという問いにはそれだけ、答えて。]
まぁ、何か、見ててイライラすっから、ちょっと、ね。
[そして、しばらく沈黙が続き]
ふぅん。ま、別に好きにしたら?
僕には関係ないけど。
君を見てるみたい?そんな面白いものが見れるなら、
この子にはいわないでおこうね。
うーん?よく分からないけど。
愉しいことなら、応援するよ?
俺が、手伝った方がいいことがあったら教えてねー。
[返ってきた答えに、首を傾げながらも
失恋の痛手もあるからか、よく考えずにそんな風に返した。]
…「なんかに」っていわれた…
[散々「殺す気はない」といっているのに、
何故にこうも悪者扱いされるんだろう]
ひどいなぁ。元々、君達が素直じゃないのがいけないんじゃないか。
[なんかぷりぷりしていた]
ん、今度は薔薇ちゃんに何かあったの?
[なんだかぷりぷりしている様子に、首傾げ。
そう言えば今更だけれど、薔薇の精霊の彼のことは、
薔薇ちゃんと呼ぶことにしたよう。]
素直になると、良くない時もあるんだよー。
[そして、ちょっと困ったように付け足す言の葉。]
おせっかいで、悪かったね。
[ノックスにじろりと視線を投げるのは薔薇の精]
やー、そんな怖い顔しないでよ。
折角、綺麗な顔してるのに。
[睨まれてそんなことを言ってみる。
綺麗な顔なのは、薔薇の精でなくエリアスだけれど。]
これ僕の顔じゃないもの。エリアスに言ってあげたら?
一度はキスした仲なんだし?結構ほだされてくれるかもよ。
この子のこと、嫌いじゃないんでしょ?
俺は嫌いじゃないけど、エリアスは俺のこと嫌いなんだもん。
エリアスの顔、綺麗だから好きだよーって言ったら
きっと猫みたいに、俺の顔引っ掻くよ!!!
[そんな恐ろしい!と、ふるふるとした声音で返した。]
さぁ…どうだろうね?
今結構精神的にキてるみたいだから、
弱ってるね、この子。
君が僕のことも好きなら僕が表にいてあげるけど。
まだ君に抱きしめてもらってないんだよ?
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