162 絶望と後悔と懺悔と
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[都に降る雨の、零の宝石は―――…
*鮮血色の紅玉*]
/*
業務連絡ー。
お父様がどの子を支配してるかってお父様が今決めちゃう?
− 始祖の城 −
[その城は結界で守られ、守護部隊ですら始祖が
生存している限りは感知する事は不可能だった。
地下は捕えられた家畜の住処であり、
吸血鬼達の様々な捌け口でもあった。
本来なら雛鳥達も同じ扱いを受けるはずだった。
だが何かを思い付いた様な始祖の言葉で、雛鳥達の待遇は
人間どころか吸血鬼達よりも手厚いものに変わる]
連れて来た雛鳥達は特別に扱うように。
家畜共にも言い聞かせておけ。
雛鳥達はお前達家畜と違い、私に選ばれた者達だと。
[楽しそうに告げた内容に、部下達が不可解な表情を浮かべる。
そんな彼らにも同じ様に]
お前達よりも特別だと言ったのだ。
少なくとも私の気の済むまでは、お前達も丁寧に扱え。
ただし逃がすなよ。
家畜達にも肝に銘じさせろ。
[一瞬浮かんだ不満の色。
好い色だ。
同じ人間でありながら、下等な人間でありながら、
選ばれたと言う嫉妬、羨望、憎悪。
直接危害は加えられないだろうが、向けられる視線は
雛鳥達を人間からも吸血鬼からも孤立させるものになるだろう]
城から出れば、
裏切り者と家畜達から石を投げられるかもしれないが。
それも面白いな。
[逃がすなとは言ったが、実際に外で人間達に見限られた様に
蔑まれる姿を見物するのも面白い。
そんな事を近くにいるホリーには告げて、
まだ眠りに就いているだろう雛鳥達の目覚めを
楽しみに、神宿でホリーが集めた血酒を堪能するのだった**]
−始祖の城−
ん……んん…?
[そう、記憶はそこで途切れていた。
何故なら、次に醒めたときには城にいたのだから。]
此処は……極楽…浄土ですかな。
いや、私は「生きている」?
ああ!私は「生きている」!良かった…良かった!!
[はぁっ……「生きている」「生きている」と咽び、
ただただ感涙。おいおい、と男泣きである。
今はただ「生きている」ということが嬉しいようだ。]
ん……「生きている」?妙です。
僕は。僕たちは襲われたのではなかったのですか。
……何かの陰謀。そうだ、そうに違いない!
[顎に手を当てた。]
―始祖の城―
[息苦しく、頭がぼんやりしていた。
熱を出した時のようだと少年は感じていた。
寝込んでいる時は、誰かが頭を撫でてくれていた。
それは真弓であったり、年下だけどリカルダであったり、
つらいとも心細いとも言わない子供に、
代わる代わる、誰かが必ず優しかった。]
――、……
[熱を持ったのは怪我のせいだ。]
[混乱のせいだろうか。
どうしてここに連れてこられたのか
どうやってここに来たのかよく覚えていない。
けれどマユミが浚われるのを目の前にし、
サミュエルが気絶するときも一歩も動けなかった
ピアスに触れても痛くない。
何度も弄られたホールは既に裂けていて相変わらず赤い筋が残る
周りの声に、やっと目を動かす程度だったりで]
[ただ覚えているのはあのきんいろをまた目にした時
自分を捕らえようとした吸血鬼へ自分から手を伸ばした覚えだけ。
──「連れて行って」と。
どうしてそんな言葉が出たのか分からない。
けれど拒否するような行動だけはしなかった。
今は自分ですら「どうして」と思う]
誰か…いないのかな…
[きょろ、と周りを見回す。ここはどこだろう。
孤児院よりずっと上質な…そして、見慣れない内装。
実際の温度がどうだったかわからないけれど、
妙に肌寒かった]
― 始祖の城 ―
流石はお父様。
あの子達をもう一度外に出す時が愉しみです。
[そう言って微笑む。
余計な介入が入ってしまった感動の再会をもう一度執り行うのも悪くは無い。]
そういえば、その味はどうです?
若い少女の血だけを使って作った血酒。
お父様のお口に合えば幸いですわ。
[ねえ?と同意を求めるように近くに居た家畜に微笑んだ。
真っ青な顔で給仕を手伝っていた家畜が作り笑顔で肯くのを見やってから、愉しい趣向を思いついたのかトルドヴィンに語りかける。]
あの子達にも今度振舞ってあげましょう。
幸いな事に、材料はまだ神宿に残っていますから。
[現在:
周りを見回す。まだ頭が混乱していて、よくわからない。
これこそ夢じゃないのか。おきたらまた低いベッドの天井が見えて、すっぱい林檎がテーブルにあって
堪えていた涙が溢れそうになって深呼吸してまた堪える]
誰か…いないの?ねぇ、誰か…
[1人にしては大きな部屋のようだ。きょろり、部屋を見渡せばちらほらと倒れているような人影が見えた。
けれどそれらが死体のようにも見えて、怖くて声がかけられない]
[丁重に扱えという命のため、寝かされた寝台で
馴染みの声に重たい瞼を上げた。
返事をしたつもりだったが漏れたのは少し呻き声]
……理依、くん ?
[身に馴染まないふかふかの感触や見慣れない景色より
家族の声の出所を探している。]
[かすれたような声が聞こえて、はっとそちらを向く。
聞きなれた声。柊だ]
柊?いるの?俺だよ。理依だよ
[因みに彼の名前を苗字で呼ぶのは他人行儀ではなくて
ただ柊という響きが好きなだけ。
部屋を見渡せばすぐにその姿は認識できた]
柊…!よかった、生きてた。怪我とかはない?大丈夫?
うん……
[頷いたのは惰性で、自分の状態を把握した訳でなく。
間があいて、場違いといえば場違いな挨拶が続いた]
おはよう。
オハヨ。
なんか疲れてるっぽいね…当たり前か。
[くるりと周りを見渡し、他に寝台にいる家族もきっと生きてるんだろう。
まずは安堵のため息を一つ]
…ここどこだろうね。吸血鬼が住んでるとかかな。
あのさ、なんで孤児院に吸血鬼なんかがきたのか知ってる?
俺実は…
[裏路地で吸血鬼に出会ってしまったこと、数え鬼のこと、
鬼ごっこに勝ったはずで、孤児院に戻ったらあんなことになってて…
予想ついていることを否定したくて、あえて聞いてみた]
[柊は冬の木と書くと零瑠に教わった事がある。
それを理依に話した時、少しだけ楽しそうな顔を
していたような記憶があった。
どこだろう、と言われて、良く解らない顔をする。
今、理依の後ろに見える室内は確かに孤児院の寝室じゃない]
……吸血――鬼?
[そう、理由も良く解っていなかった。
やはり沈黙が挟まった。]
サミュエル、帰って来た……あ
[目覚める前、自分はどうしていたか? 最後に見たのは赤い]
――あ、う……
[もぞもぞと首を横に振る。]
サミィが、先に…
[そうなんだ。それじゃ、あのきんいろは
俺をおいかけるとかいって…。
彼は約束は守るといっていたけど、確かに自分は殺されていない]
は、はは……俺も原因の一つだったのかな…
なんていえば、いいんだかね…
と、どうしたの。大丈夫?
[幸いというか、自分はそこまであの孤児院の惨劇を長く見ていたわけじゃない。途中から記憶すら曖昧だ。罪悪感がそうさせているのかもしれないが]
少しゆっくりしてなよ。
そうすぐに殺されるってことはないと思うから。
そんなつもりなら、こんな綺麗な場所に入れたり市内と思うしね。
[きんいろの本音は知らないけれど今悲観的になってもしょうがない。
ぽん、と上掛けの上から優しく叩き]
[優しく置かれる手で鈍い痛みを覚えたものの、
幸いそれはあまり顔に出なかった。
ゆっくりして、といったことが聞こえたが、
頭の中は恐ろしい混迷でいっぱいになっている。
硬い無表情の中、視線だけは日常のあった印を、
つまりは理依を、珍しく頼るように追った。]
部屋の外、出てみようかと思ってるけど…
柊、大丈夫?ここにいる?
俺は…あのきんいろの吸血鬼が俺を殺さないっていってたから多分大丈夫だと思うんだ。
[それは全くの希望的観測でなんの保証もない。
でもここから逃げられるようなきっかけが見つけられるなら外に出るのも大事だと思う
柊はその約束の適用外なのだから
何かあるのは怖い。けれどこう怖がっている家族をそのままほっておくのも気が引けた]
大丈夫……
[自分の事はそう答えるが、
部屋の外に出るという声には少し難色を示した。]
…………理依君、大丈、夫?
――お願い。大丈夫?
[出て行って、それきり帰って来なくなったりしないか。]
うん…大丈夫。それに、ここがもし食べられちゃう前にいれられるような部屋だったらそれこそ早く逃げなくちゃ。
大丈夫だよ。なんだったら柊は皆を見ててあげてよ
[思い込みがいつしか本当だと思えてきてしまう。
無意識にあの金色をもう一度見たかったとも思っていた
柊がついてこないなら自分ひとりでいくつもりで]
……うん。
行ってらっしゃい。
[皆を見ててあげる事。役割を与えられればそれに頷く。
かける声だけはいつも通りだ。
部屋の外に出ようとする理依を見送るように、
のろのろとベッドの上で半身を起こした]
うん。行ってくる。
[柊の言葉に頷いて、それから部屋の中…マユミの姿らしいものを見つけてまずは安堵し、そして小さい声で]
マユミちゃん、帰れる手段、探してくるからさ
ちょっとだけ待ってて。
俺にも責任あるし。
[それから目が覚めたらしい直円に顔を向ける。
あの孤児院で彼が叫んでいた言葉は聞こえていない。
だから今は純粋に安堵のため息]
直円、俺ちょっと出て行くから。
みんなのことお願いね。
―城内―
[――夢はなにもみなかった、
見たような気もするけど忘れてしまった。
柔らかなものに包まれて、泥のように溶けていた意識は、
小さく交わされる声にくすぐられる]
……、
[覚醒までは届かない、
ただ柔らかなものが寝具だと気づいて、
――昔の家に戻ってきたのかと一瞬錯覚する。]
――………、、ん、
[まどろむ意識は、もういない人を呼ぶ音を紡がせた]
[ 囁きが意味を成したのは、
自分の名前を呼ばれたからだ、重い目蓋を開く。
見慣れぬ、場所。目の前にいたのは理衣、一瞬であの惨劇が目蓋の裏に蘇った]
っ、……、ここは、
[吸血鬼の居城、なのだろう。
あの漆黒の少女は、黄金の死神はどこにいったのか、
見渡せば、他にも数人の姿が室内にある]
なんで……、
なんで、理衣くん来ちゃった、の。
[待ってて、という言葉に首を横にふった]
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