159 せかいのおわるひに。
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/* あ、最終日かな。
(-0) 2014/01/23(Thu) 00時頃
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[私にはもう、お兄ちゃんを止められない。 わがままは言えない。 だって、こんなことになったのは、私が我慢しなかったせいだから。 私がわがままだったせいだから。 だからもう、私はわがままが言えない]
ごめんなさい……。
[私が我慢すれば、こんなことにはならなかった。 だったら、私は一生我慢していればよかったんだ。 ずっと今まで我慢してきたんだから、できたはずなのに。 私が我慢しなかったから、お兄ちゃんとフランクさんは死んだんだ]
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
[こんなことになるってわかってたら。 私は決してわがままを言ったりなんかしなかったのに。 一生、なにもかも我慢したのに]
(0) 2014/01/23(Thu) 00時頃
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[ふらふらと、お兄ちゃんとフランクさんに近づいて、そのままぺたんと座り込んだ。 座り込んだ途端、もう二度と立てない気がした]
……ビクター。
[座り込む私にビクターが近づいて、慰めるようにほっぺたを舐めてくれる。 私は眉を下げて、笑った]
ごめん、ビクター。 ビクターのお仕事、なくなっちゃったよ。
[頭を撫でて、私はビクターのハーネスをはずしてあげた。 これも、もう必要ない]
(4) 2014/01/23(Thu) 00時半頃
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[ハーネスをはずして、私はそのままビクターの首にぎゅっと抱きついた。さっき、お兄ちゃんの腕にそうしたみたいに]
おしまいの時に、お兄ちゃんといられたら、私はそれでよかったのに。 どうしようビクター、私ひとりぼっちになっちゃった。
(7) 2014/01/23(Thu) 00時半頃
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[考えてみれば、簡単にわかったことなんだ。フランクさんが、お兄ちゃんにとって特別な人だってことくらい。 だって私は、お兄ちゃんがフランクさんに向ける、見たことのない表情にジェラシーだったんだから。 目の見えないお兄ちゃんが、本屋さんに行きたいなんて言い出して、フランクさんの本を買ったり。 あの時私はなんて言ったんだっけ。音読してあげようか?なんて言ったかもしれない]
チョコレート、最後に一緒に食べようって、思ったのにな。
[かばんの中には、キャサリンにもらったチョコレートが入ったまま。お兄ちゃんと一緒に食べたかったのに。 お兄ちゃんにも買ってもらったことがあった。あの時のものとは、さすがに別のものだけど]
(9) 2014/01/23(Thu) 00時半頃
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ビクター、私、これからどうしよう。 どうしたらいいんだろう。
[もう、私には何もない。 何をしたらいいのかわからない。 立ち上がることもできない。大体、立ち上がって、それからどこに行けばいいっていうんだろう]
本当に、勉強なんて、なんにも役に立たないね。 こういう時どうしたらいいか、なんにも教えてくれない。
[私には将来なんてなかったんだから、せめて今役立ってくれたっていいのに。 そう、かすかに笑って……私は、動けない**]
(11) 2014/01/23(Thu) 00時半頃
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[思い出すのは、お兄ちゃんの笑顔。それはたとえば、買った本を読んであげようかって聞いた時の。 そうだ、私はいろんなことを我慢させられていたけど、あの時確かに幸せだった。 お兄ちゃんがいれば、私は幸せだったんだ。 それなのに、私は我慢することをやめて。 なによりも大事な、お兄ちゃんを失ってしまった。
チョコレートが好きだった。 夜の駅前広場で、ひっそりと食べるのが楽しみだった。 そう、お兄ちゃんには言ったけど。 でも、それよりなにより一番一等好きなのは、お兄ちゃんだったんだよ]
(37) 2014/01/23(Thu) 17時半頃
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「なんで隠れるの、お兄ちゃん」
[あの時、私はそう言って笑ったんだっけ。 フランクさんの本を買った帰り道、まさにその作者にばったり会ったのが、照れくさいのかなあなんて思った。だから、フランクさんに参考書だって間違われて、私からは訂正しなかった。 お兄ちゃんは言うのかな、どうかなって見守ってた。
お兄ちゃんの特別な人。 お兄ちゃんがおしまいを一緒に過ごしたかったのは、フランクさんだったんだ。 それを、私が駄目にしたから。私のわがままのせいで駄目にしたから。 だから、私はお兄ちゃんを止められなくて。 私は、ひとりぼっちでおしまいを迎えることになるんだろう。 それが、私のわがままの代償]
(38) 2014/01/23(Thu) 17時半頃
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[どこか遠くで、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。 ううん、本当は、近かったのかもしれない。だけど、すごく遠く聞こえた。 誰だろう。私、ひとりぼっちなのに。 ひとりぼっちの私を、誰が呼ぶんだろう]
……ぁ……。
[返事して、と声がして。声を出そうと思うのに。 喉が張り付いたみたいに、声は出てこなくて]
(39) 2014/01/23(Thu) 17時半頃
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デメテルは、は、座り込んだまま、ゆっくり顔だけキャサリンの方へと向ける。
2014/01/23(Thu) 17時半頃
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きゃさりん。
[あ、やっと声が出た。 私は地面に座り込んで、ビクターを抱きしめたまま、立ちすくむキャサリンに笑おうとした。 でも、顔がこわばって、ぴくりとも動かなかった]
ごめん。 お兄ちゃん、紹介するって、約束したのに。
[涙は出てこない。だって、これは、私が招いたことだから。 私の、自業自得だから]
紹介、できなくなっちゃった。
(40) 2014/01/23(Thu) 17時半頃
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ね……私、どうしよう。 これから、どうしたらいいのかな。
[ああ、もう本当に。 勉強なんて、何の役にも立たない**]
(41) 2014/01/23(Thu) 17時半頃
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先生。
[キャサリンの後ろから、錠先生もやってきた。私は座り込んだまま、先生を見上げる。普段なら、そんな失礼なことはしないけど、どうしたって私は立てない。 先生の話に耳を傾ける。生きてるものはいつか死ぬ。 今日私たちは死んでしまう。 そんなことは知ってた。だからただ、私はそのおしまいに、お兄ちゃんと一緒にいることを願った]
……ああ、そっか。
[それなら、死ねばよかった。 お兄ちゃんが、フランクさんとおしまいを迎えたいと願って、あとを追いかけたみたいに。 私もお兄ちゃんを追いかけて、すぐに死んでしまえばよかった。 そうしたら、私はお兄ちゃんと一緒におしまいを迎えられたのに]
(45) 2014/01/23(Thu) 20時頃
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楽しいことって、なんですか。
[先生を見上げて、私は問いかける。楽しいことって何ですか]
私にはもう、なにもないのに。 私がフランクさんとお兄ちゃんを死に追いやったのに、そんなこと言っていいんですか。
[頭を撫でられる。お兄ちゃんとは違う手に。 お兄ちゃんの名残が、消えてしまう]
(49) 2014/01/23(Thu) 21時半頃
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キャサリンの方こそ。 どうしてキャサリンが謝るの。
[眉を下げて、私はもう一度キャサリンに向かって笑おうと試みた。 うまくいったかはよくわからない]
私が、学校を燃やしちゃおうって言ったんだよ。 全部、私が、自分で決めて、やったことだよ。
[学校に来たのも、キャサリンを手伝おうって決めたのも、学校を燃やすことにしたのも。 全部、私が自分で決めたことだ。キャサリンが謝ることは何もない]
(54) 2014/01/23(Thu) 22時頃
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[それなのに、キャサリンは一生懸命否定する。 首を横に振って、泣き叫ぶような声で、私は悪くないって。悪いのはキャサリンだって主張する。 どうしてキャサリン、こんなに一生懸命なんだろう。 どうしてこんなに一生懸命、私を慰めようとしてくれるんだろう]
キャサリンのせいじゃないよ。 でも……ありがとう。
[いい子だなあと思う。友達でもない私のために、こんなに一生懸命になってくれる。 もっと早く、こんなことになる前に、知れたらよかった。そうしたら、友達にだってなれたかもしれない。 ううん、それは駄目だ。私はずっと、我慢して生きるべきだったんだから。そんなifは存在しない]
(55) 2014/01/23(Thu) 22時頃
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お兄ちゃん? お兄ちゃんはね、謝ってたよ。
[ごめんねって。 お兄ちゃんは優しいから、私を責めたりしない。 最後まで、私の願いをかなえられないことだけを謝って、そうして私を置いていってしまった。 私、別に、謝ってほしくなんて、なかったのに]
(56) 2014/01/23(Thu) 22時頃
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したいこと? ……もう、ないです。
[だってもう、この世界のどこを探しても、お兄ちゃんはいない]
もう、動けません。 だから……私、ここでいいです。
[危なくても構わなかった。命なんて、もう全然惜しくなかった。 それに、私は見ず知らずの人をそのままにしておくのが忍びないという理由もあって、学校に火をつけたのに。 ここをこのまま立ち去ったら、フランクさんとお兄ちゃんをそのままにしてしまう]
(60) 2014/01/23(Thu) 23時頃
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[先生の言葉に、私はゆるゆると首を横に振った]
私がお兄ちゃんを死なせたのに。 その私が、お兄ちゃんの分まで……なんて。 どの口が言うんだって感じです。
[ビクターが来るまでは、よくお兄ちゃんの手を引いて歩いた。 杖を持つ手とは反対の方の手を引いて、一緒に歩くのが好きだった。 そうして、いろんなことを教えてあげた。 近所の花が咲いたこと。犬が子供を産んだこと。 だけど、もう。 お兄ちゃんのいない世界を見つめたって、私の心には、何も映りこんでこないんだ]
(68) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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え。
[だけど。 近くにいてもいいかな、というキャサリンの言葉に、私は目を見開いた。 何も映らないはずの私の目は、キャサリンをまじまじと見つめる]
別に、私に気を使ってくれなくていいんだよ。 キャサリンが負い目を感じることなんてなにもないから。 キャサリンは、キャサリンの好きなことしたらいいんだよ。
[私が放火に加担させたから、キャサリンは罪悪感を感じてるんだ。 そんな風に感じる必要なんて、全然ないのに]
私、楽しかったから。 友達って、こんな感じなのかなって。 だからさ、キャサリンが責任を感じる必要は、ないんだよ。
(73) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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[それとも、そんな風に私が感じることこそ、キャサリンには迷惑だろうか。 一方的に、初めての友達だと思われるなんて。 そう、思ったのに]
……え。
[キャサリンが、言った。 私のこと、友達だって。 本当に? 本当に、そう思ってくれるの]
ありがとう……。
[お兄ちゃんとフランクさんが死んでも、涙は出てこなかった。だって、私の自業自得だったから。 それなのに、目の奥が熱くなる]
ありがとう、キャサリン。
[私のこと、友達にしてくれて]
(74) 2014/01/23(Thu) 23時半頃
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…………。
[先生の言葉には、それでもやっぱり納得できない。 先生の奥さんが亡くなったのは病気で、それは確かに誰のせいでもないけど、お兄ちゃんは違う。 ひき逃げされた人が死んでしまったら、やっぱりそれはひき逃げした人のせいだと思うし。 ……だけど、私はそんなことは言わなかった]
……ありがとう、ございます。
[先生も、キャサリンも、こんな私のために一生懸命になってくれる。 客観的に見たって、どう考えても私が悪いのは間違いないと思うのに。それでも、一生懸命私を励ましてくれる。 私の罪は消えない。だけど、私のために一生懸命になってくれる人がいるとわかっただけで、私が生まれてきたことに、意味はあったような気がした]
(77) 2014/01/24(Fri) 00時頃
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