199 Halloween † rose
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[幾ら月が変わって直ぐと言えど、暦の上ではすっかり冬で、 防寒器具など無い薬屋では、死体は殆ど外気と同じ冷たさだっただろう。
突然飛び込んできた熱>>127をよろめきながらも反射的に抱きとめて、結果抱きしめる形に収まっただろうか。 転んだようには見えなかったが、下手な嘘>>128をそうかと流して、 半透明で無い彼の髪を、優しく撫でた。
そして、小さくため息を一つ。]
…――その、事なんだが。
[>>129言わなくてはいけない。が、口は重く、中々言葉は出て来ない。 こんな物先延ばしにしたって、なにもいい事は無いだろう。 彼にとっても、自分にとっても。何一つ。]
(@30) mzsn 2014/11/02(Sun) 01時頃
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[いっその事、身体と一緒に心まで朽ちてしまえば良かったのに。 戸惑い、躊躇い、淡々と言葉を紡げない自分を酷く呪う。
ただ、悲しい顔は見たくないと、強く強くそう思って。 それでも、その顔を崩してしまう言葉を、紡がなくてはと、]
俺も、 …お前と一緒に過ごすのは好きだ。 ハロウィンのループだけじゃ短すぎる。 もう少し、お前の話も聞いてみたい。
(@31) mzsn 2014/11/02(Sun) 01時頃
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………が、一緒には、行けそうに無い。 すまんな。 先客が出来た。 折角、匿ってくれるっつったのに。
お前とは、 この街でお別れなんだよ。
[緩く抱いた腕はそのまま。 放したら、彼の泣き顔が、見えてしまいそうで。
甘い香りが近い。 それはあの、小さな砂糖菓子の香か。 それとも彼の香か。]
(@32) mzsn 2014/11/02(Sun) 01時頃
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[>>133 果てのない闇。温かな闇。 無音のそこにひとつ、炎が燈る。
懐かしい声が聞こえる。
目を開くとそこには、あの日のままの姿があった。 記憶の中の霞み繋ぎ止めた像ではなく、鮮やかに、そこに]
………、
[遠く、泣き縋る声が聞こえる。あの少女が泣いている。 たくさんの人を置いてきた。たくさんの景色を置いてきた。 もう一度巡ればまた、あの光に会えるのだろう。
“レイズ”の声が響く]
(@33) heinrich 2014/11/02(Sun) 02時頃
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ちょっと見ない間に、勘が鈍ったのかしら。
[手を伸ばし、耳に、頬に、首筋に、触れて。 胸の上に手を置いて、向けるは挑発の笑み]
アタシの勝ちよ、
[――…ショー・ダウン]
(@34) heinrich 2014/11/02(Sun) 02時頃
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……愛してるわ、シーシャ
(@35) heinrich 2014/11/02(Sun) 02時頃
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[>>156 闇の色が濃くなった。 現し世はさらに遠く、輪廻の光も届かぬ奥へ。
魔に堕ちる。そのことの意味を肌で感じる。 人の身にはおそらく“嫌悪”として映る物。 真っ黒になるまで煮詰めた、混沌と誘惑の香り。
愛しい腕に抱かれて嗅ぐ闇の、なんと芳しいことか]
……ンッ
[また何か言おうとした唇を、自分から迎えに行った。 問答の時間も惜しんで、互いに求めあう口付け。
そして異変はすぐさま訪れる。 舌に絡み喉を焼き、裡へと辿りついた熱の塊。 業火に内側から身を焼かれ、存在を塗り替えられる]
(@36) heinrich 2014/11/02(Sun) 04時頃
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ぁ……っ、 く
[苦鳴が喉の奥から漏れる。 立てなくなりそうな惑乱の中、シーシャの背を掻き抱いた。
もっと、もっと。 ねだる眼差しは浅ましく、とろりと溶けた糖蜜のように。 理性は炎で焼き切れて、ただ“快”を、自分にとっての一番の愉悦を求めて泣いて]
シーシャ……、
[炎は全てを焼き尽くし、ようやっと鎮まった。くったりと腕の中に崩れ落ちれば、額にも首筋にも汗が浮いて、まだ頭がぼんやりする]
あぁ……、まだドキドキしてる。
[強烈な炎の余韻を身の内に感じながら、小さく笑うとシーシャの頬に手を伸ばした]
(@37) heinrich 2014/11/02(Sun) 04時半頃
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[額を拭う手の優しさと、覗く眼差しの苛烈さと。ゆらめくふたつの色に心が翻弄される。 腰を抱き寄せられて、体の奥が深く疼いた]
アタシだってね、ずっとお預けされてたんだから、
[頬撫でる指は口元へと辿り着き、シーシャの薄く形良い唇をなぞる]
もう、我慢なんてできないの。
[情欲の色に染まる瞳で、ゆうるりと笑って見せて]
(@38) heinrich 2014/11/02(Sun) 06時頃
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[名を問う声に、小さく瞬く。 もうずっと長く“華月斎”であったから、その前の名は手付かずの姿で眠らせていた。 必要とされることのなかった、その名前]
ちょっと、恥ずかしいわね。
[あんな口づけを交わしておきながら、名前ひとつで兆す恥じらい。 隠していた全てをさらけ出すような心地。 耳元へと口を寄せ、小さな、声で]
和希。かずき、よ。
[秘密を打ち明けるように囁いた]
(@39) heinrich 2014/11/02(Sun) 06時頃
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[揶揄いまじりの言葉を向けられ、顔にサッと朱が走る]
アンタ以外を相手に勃ちゃしないわよバカ!
[文句を言ったつもりが、どツボに嵌ったかもしれない。 意地悪なはずの眼差しは、見上げれば何故か温かく感じられて、余計に体が熱くなった。
抱き上げられ、寝台へと横たえられる。体に感じる彼の重みが心地いい。 あの頃、けっして踏み込んでこなかった深みへ。迷いなく求められて、心が震えてしまう]
……ぁっ、
[瞼への口づけの後、急な心許なさに身をすくめる。隠そうにも彼の重みで身動きが取れず、体の全てをさらけ出したまま]
(@40) heinrich 2014/11/02(Sun) 18時頃
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アタシの悦びは、アナタの悦び。アタシの涙は、アナタの涙……。
[シーシャを見上げたまま、与えられた言葉を繰り返す。その言葉の響きは、まるで、]
……誓いの言葉みたい。
[ぽつり、零してから、微笑む。目元が滲んでしまいそうだ。 祝福する神もいないけれど、お互いだけを証人にして交わされる誓いの言葉。 胸元に刻まれる契約の印は、奥深く息づいて、ゆるやかに根を張っていく]
シーシャ、 キスして?
[囁いてねだるのは、炎を移すためでも、契約を刻むためでもない、ただ互いを欲する口づけ]
(@41) heinrich 2014/11/02(Sun) 18時頃
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[>>178>>179今後この街に戻る予定は無いし、数年で居所を変える身。 リーと共に行くならばそれも多少は落ち付きを見せるだろうが、それでも、再びこの男と顔を合わせる可能性はゼロに近いのだろう。 住所を送る気も、あまりない。]
…そうだな。 多分、二度と。
[彼と、リーと。何処が違うのかと問うてみても答えは曖昧で、 それでも選んだのは彼では無いのだと、昨夜と同じような温もりと笑みを強く抱く事はしない。 ただ、彼の笑みだけは昨夜のリーの物と大きく違って居て。そして、それを違えてしまったのは自分だった。
縋る男をゆるりと撫でていれば、差し出されたのは11月の菓子。>>180 恐らく彼のクニの菓子なのだろう。異国の珍しい品で、目にした事はあまりない。
押し当てられた欠片を加えれば、彼の指にカサついた唇が触れたか。]
(@42) mzsn 2014/11/02(Sun) 21時頃
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[人の食べ物は、魔にとっては時に脅威に。
ぐずぐずと、 口内を焼きながら溶け行く砂糖を転がすと、]
…うまいよ
[そう呟いて、閉じ込めていた手を離す。
ハッカは魔を祓う。 砂糖と薄荷と、血肉の味をさせて、星は溶けた。 唇を僅か爛れさせて。]
(@43) mzsn 2014/11/02(Sun) 21時半頃
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[正体を知った人間をこのまま帰すのは、気が引ける。 数日分の記憶を飛ばす薬もあるし、それこそ、殺して今度こそキッチリ幽霊にしてやってもいい。 それでもそれを実行しないのは、特別な情が沸いたからか。]
…――百年か二百年位したら、 その時は匿ってくれ。
運が良けりゃ、まだ生きてる。
[自分は。 しかし、彼はとっくに灰になった頃。
温もりがうつった身体は徐々に冷え、再び冬の外気を纏い始めるだろう。最初から彼の抱擁など無かったかのように。
結局、昨晩別の人間と踊ったダンスフロアに、 彼を招く事は無かった。*]
(@44) mzsn 2014/11/02(Sun) 21時半頃
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[想いの欠片を纏って零れ落ちる、シーシャの言葉。賭けをしたあの日を思う。自分の魂を対価に、彼の傍にいられればと願った]
もうどこにも行かないわ。
[彼の想いに触れた今は、酷いことを願ったと思う。今はもう、彼なしで生きることも、彼を置いて死ぬことも考えられない]
この体も、心も、全部。
[長い長い時間をかけて、ようやくたどり着いた自分の居場所]
(@45) heinrich 2014/11/02(Sun) 22時半頃
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[音立てて繰り返す口づけ。甘い毒に少しずつ意識を侵されていく]
………ッ、
[肌を滑る掌。触れられた所から熱を持って粟立つ。 下腹部を擦り上げられると、強い刺激から逃げようとするように反射で腰が引けてしまう]
だ……め……、
[上がりそうになる嬌声を喉奥で噛み殺して、寄る辺を求めるように手がシーツを掴む。 己以外の手で齎される、強すぎる快感。裡から煮えたぎる情欲に、容易に落ちてしまいそうで、]
……シー、シャ
[怖い、と思う気持ちと。もっと、と欲する気持ちと。相反する感情がせめぎ合う。 擦り上げられた胸がジンと痺れて熱を持ち、堪らず腰を彼の手に押し付けた]
(@46) heinrich 2014/11/02(Sun) 22時半頃
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―11月1日―
[広場のベンチに座り、行き交う人々を眺める。 祭の賑わいは秋風とともに過ぎ去って、この街の日常に掻き消される]
長居したわね……。
[この街に滞在したのは、今日を合わせて“たった3日間”のこと。 けれど離れ難くなるほどに、いろいろなことがありすぎた]
これ以上ここに居たら、本当に出ていけなくなっちゃいそう。
[もう旅支度は住んでいた。派手な衣装は鞄の中。身軽なバックパッカーのような出で立ちで、もういつでも次の街へ行ける。 それでもまだここにいるのは、いくつか心残りがあるから]
(@47) heinrich 2014/11/02(Sun) 23時頃
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[>>221 名を呼ぶ声に顔を上げると、笑みとともにこちらへ駆け寄る姿が見えた。 立ち上がり、ひらと手を振って出迎えて]
会えてよかったわ。 あとちょっとで約束破りのペテン師になるところだった。
[笑ってそんなことを言い、上着のポケットに手を入れる。 手を出して、と囁いて、彼の掌に乗せたのは橙色のお手玉]
(@48) heinrich 2014/11/02(Sun) 23時半頃
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―11月1日:???―
[その店が開いていようが閉まって居ようがお構いなし。 どうせこの時間なら店主は居るだろうと目星をつけ、勝手に店内へ入って行った。
店主の名前を呼びながらズカズカと侵入して、寝て居たら起こしてやる勢い。 居なかったら、もうひとつの候補先である愛人の家まで出向くつもりで。]
(@49) mzsn 2014/11/03(Mon) 00時頃
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―11月1日:ニコラエの店―
[その顔色の悪いアンデットは、招かれたから来てやったと。そう言うだろう。
要件は特になく、しいて言えば「この街を出る」と、それだけ。 と言ってもこの街に住まない吸血鬼には、あまり関係の無い事だっただろうが。
後は――、]
…次の新しい店は、 少々雰囲気を変えたくてな。
[要望はそれだけ。 特に何を買うかも決めて居ない。 何が置いてあるのか、何がいいのか。イマイチ興味の薄い面倒な客だっただろう。 品物の種類もチョイスも、店主の吸血鬼に全て任せた。]
(@50) mzsn 2014/11/03(Mon) 00時頃
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[薬屋に騒がしい店員が増えるなら、店の空気も変えなくては。…と言うか、どうせ弄られるに決まってる。 次の店はスペースを広く取って、あの忙しない青年が動き回れるようにしてやろう。 一所にじっとして居られない、リアクションの大きい、煩い店番。 薬屋の番としての働きぶりはまだ見ていないが、きっと明るめの店になるのだと思う。
肝心の代金は、支払いは要らんと伝えた筈の輸血パック代と、人の店で素っ裸になった迷惑料と、人の家の前で盛って居た迷惑料と。 それで勘弁してやると言って商品を強奪して帰って行った。
多い出したように、ドナルドのレポートの催促を言付けて。]
(@51) mzsn 2014/11/03(Mon) 00時頃
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[偶に爛れた唇を噛むのは無意識に。 肉の味がしても、別段気にする事は無い。*]
(@52) mzsn 2014/11/03(Mon) 00時頃
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研修生 キリシマは、メモを貼った。
mzsn 2014/11/03(Mon) 00時頃
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―広場>>228―
だから手が早いんじゃなくてぇ、
[訂正をしようとして。 なんとなく嘘とも言い切れない気がして否定が濁った。 あっという間に悪魔に骨抜きにされた自分。した方じゃなくてされた方だから、「手が早い」からは外れるだろうか。
お手玉を手にのせると、すぐに意図を察したリーの顔が鮮やかに輝いた]
まずはこういう簡単なのから練習なさい。まっすぐ上に、同じ高さに。
[くったりと手に馴染むお手玉は、南瓜よりよほど扱いやすいだろう。 もうひとつ取り出すと、真上へ、真上へ、手本を見せて]
それに慣れたら、手のひら、手の甲、手のひら。 それも出来たら、右手、左手、右手、同じ軌道で出来るように。
[あのスパルタ特訓で踊りを覚えたリーならば、このくらいすぐに覚えるだろう。 その上達を見守れないのが、少し、さみしい]
(@53) heinrich 2014/11/03(Mon) 00時半頃
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あら、上手じょうず。やっぱりリーは筋がいいわね。
[>>235 それらしい軌道を描き始めたお手玉、目を細めて手を叩く]
きっとすぐに私より上手くなるわ。
[そう言って、2個め、3個めのお手玉をリーの手に乗せて]
上達のコツはね、自分が喜ばせたい相手のこと考えて練習するの。練習も誰かと一緒がいいわ。早く喜ばせたくなって、すぐに上手くなっちゃうから。
[それでその相手が、リーをいっぱい褒めてくれたらいい。自分の代わりに]
(@54) heinrich 2014/11/03(Mon) 01時頃
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―11月18日、出発の日―
[荷物はたった一つだけ。 その中に店の道具を、この街で過ごした10年を全て詰め込んで。 防寒具なんて必要ないが、人間の振りをして若干カビ臭いコートなんかを着込んでみたり。
列車のチケットは二人分。 目的地までは距離がある。まずは大きめの駅に行って、そこから寝台列車に乗り変えよう。 次の街は、やや遠い。
待ち合わせたのは何処だったか。 どこであろうとその大きなトランクに腰をかけて、コートと同じように汚い帽子をかぶって同行者を待っている。]
(@55) mzsn 2014/11/03(Mon) 01時頃
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…おせぇ。 行くぞ。
[>>224>>225>>226夜を歩かせる事に迷いはない。 こいつが自分で飛び込んだんだ。責任も、悲しみも、自分で処理するだろう。 自分はその隣で、今まで通り在るだけ。
ただ、今までの100年とは随分違った生活になりそうだと、騒がしい声に目を細めた。*]
(@56) mzsn 2014/11/03(Mon) 01時頃
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―その後の、 ―
[酒場の近くの大きな十字路を左に曲がって、暖かい頃は変わり者のピエロが佇んでいた角の更に奥の、細い横道。 少し薄暗い道を歩き、突き当りを右。
街の奥の奥。深い裏路地。 深い緑色をしていたであろう扉は木製で、腐ってその役割を果たして居ない。 真鍮製のドアノブはすっかりくすんで回りもしないし、強引に扉を引けば木片が剥がれ、ガランと、ぶら下がって居た鐘が落ちた。
扉をこじ開ければ内部は埃と蜘蛛の巣で満ちて居て、カビの香りが鼻を突く。 木製のカウンターも扉と同じように朽ち果てて、触れれば簡単に破片を散らせた。 壁に並んだ棚も、同じこと。
店内にはそれ以外に何も無く、足を踏み入れる毎に埃が宙を舞う。 地下と二階への階段もそれぞれ朽ちて、階を覗いたとしてもこの部屋と同じこと。 酷く暗い店内は、ずっと昔からその姿だったかのようにそこにある。
近所の住人に店の詳細を聞いても、ここは10年近く空き家だと言うだけ。 薬屋があった事など誰も覚えていない。 一部を除いて。*]
(@57) mzsn 2014/11/03(Mon) 01時頃
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[>>229 手のひらに、指先に、声に、匂いに、翻弄されて。 沸き上がる声が溢れそうで、自分の手の甲に歯を立てた。口を塞ぐようにしながら、ぎりぎりと噛み付いて。 そうでもしないと、自分がどんな声を上げるかわからない]
……ッ、!
[容赦のない手が、湧いた愉悦を追いたてる。濡れた音が混ざりこみ、聴覚から脳髄を甘く犯す]
(@58) heinrich 2014/11/03(Mon) 02時頃
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[>>230 間近に見上げる、魔性の瞳。あの日横顔で見たその眼差しが、まっすぐにこちらを射抜く。 本性を晒す彼の声は、少しだけ、寄る辺なさを含んでいて]
……シーシャ、
[歯型の残る手を、シーシャの頬へ伸ばす。触れて、目元をなぞって、髪を抱いて]
怖いわけ、ないでしょ。
[そう言って笑ってみせる。 肌を合わせて、その熱を感じて。竦んでいた体は今、熱の一欠片も逃すまいと、開いて、自らも絡まり合う]
――…ぁ、 ぁあっ!
[体が跳ねて、迸る悲鳴。愛しい人の腕の中、それは甘く、甘く、薔薇蜜のように]
(@59) heinrich 2014/11/03(Mon) 02時頃
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