276 ─五月、薔薇の木の下で。
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イアン! 今日がお前の命日だ!
2018/05/21(Mon) 00時頃
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────……君も俺をひとりにするんじゃないか。
[棘のある恨み言を呟く 彼が与えたものが俺にそうさせた。 この声が違う形として発されたと、気づかない。]
(*0) 2018/05/21(Mon) 00時頃
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[薔薇の花なんて大嫌いだ。 何もせず佇むだけでいつまでも美しくいられる。 俺の欲しいものを、掴んで離さない。
いつもいつも、心の奥で嫉妬し続けていた。
俺は花になんてなれない。 踏み躙られ、嘲笑の中何もできず汚され 見限られて引き抜かれるのが似合う雑草。]*
(*1) 2018/05/21(Mon) 00時半頃
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[君が俺を受け入れて手を伸ばさなければ こんな気持ちにならなかっただろう。
作品を貰うより、隣にいてくれるほうが好き。 ……欲望を受け入れられるより、隣に、
分からないなりに何かが変わったことを感じる どうしてこんな俺を置いていくのか、と。
まるで子供のようだった。]
(*2) 2018/05/21(Mon) 00時半頃
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[地上で虚しく跳ねる魚は
ひとりでは、何処にも行けない。]**
(*3) 2018/05/21(Mon) 00時半頃
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[ 声が届く。 今まで聞こえていたものとは違う、声。
拗ねた声(>>2:213)のような。 それよりももっと棘のある(>>*0)ような。
嗚呼、そうか。
つまり彼は奪えたのだろう。 無理やりにでも、強引にでも手に入れたいと思っていた、ものを。 ]
(*4) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ ぞわぞわと、心の奥が痒くなった。 掻き毟ってしまいたかったけれど、今その体力はないし。 いや、わかっていたから先に掻き毟ったのか。 薔薇――自分自身――を。
あまりにも可笑しくて、おかしくて。 零れたのは、笑い声だった。
やはり喜ばしい日だ。喜ばずしてどうする。 互いが求めるものを見つけられたのなら。 こんなにも素晴らしい時があろうか。 ]
(*5) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[君達は俺の知らないところで全てを進めた。 俺は本当に何もかも知りはしない 来てはならなかったなんて、分からない。
笑い声が仮に届いたとして、それだけで誰なのかなど 何を考えているのかなど、察せない。]**
(*6) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ 手を伸ばしたって今は何にも届かず、――(>>2:214)。 ]
(*7) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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――――いっちゃん。
(*8) 2018/05/21(Mon) 01時半頃
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[ 見つかったのが、諦めたように手を降ろしてからでよかった。 この手を無意味に、出来て、――よかった。 ]
おはよ、いっちゃん。 お目覚めはいかが?
[ 困ったように、笑いかける。 その声は、音は、薔薇の香りを連れるようにして届く。
傷だらけの手を――隠せるわけもないのに――隠そうとした。 だってもしこの手が無意味じゃ無くなってしまったら。 ]
(*9) 2018/05/21(Mon) 02時頃
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[ ―――きっともう、笑っていられなくなるから。 ]**
(*10) 2018/05/21(Mon) 02時頃
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[ 廊下からもう一度、 動けなくなった月を見上げ、 そのまま視線を落としたなら、 溺れる程の赤が 広がっている。
…… かち、 と金属音を立て、 窓を開けた。 染まるほどの赤い香りのなか、 赤泥の中に、 また、ひとを認めたなら 何時かの己を思い立ち、]
(*11) 2018/05/21(Mon) 04時半頃
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──── 惑わない、では 無かったな。
[ 特別堕ち易かっただけだ。 ──── 己、が。
忘れられざる少年時代を、思い出しやすくもあり ……顎を引っ掴んで向かせるほどの、欲は無くとも 燻る熱は 常にあったのだと、思い起こす。
誰にだって有るものだろう、 言葉にならない心の最奥が、]
(*12) 2018/05/21(Mon) 04時半頃
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──── なあ、 ………
[ 其処にいる彼等の名は呼ばずとも*]
(*13) 2018/05/21(Mon) 04時半頃
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[ ざわざわと、風もないのに薔薇の木々が囁く。 その声は聖書の一節を落とした相手のもの。
──惑わない、でもない。
ロジェのように、小夜啼鳥のように 囁き返すこともできないで、いる。 ]**
(*14) 2018/05/21(Mon) 08時頃
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っ、 え これ、なに、何のこと……俺、寝てなんていない
[その声も咽返る芳香と発せられる。 放たれる薔薇の香りに乗せて届く音に 具体的な何かを理解出来たわけじゃないが 相手と自分への違和感だけは、認識した。]
(*15) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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[傷だらけの手が痛ましい ……でも、いつからそうだった? きっと気づこうともしていなかった。
そうしたのは、誰? 怯えて動けない癖に、晒したくないものを抱えている癖に 見てほしいなどと自分勝手なことを想ったのは。 自分の傷ばかり見つめる奴が 他人のそれを癒せるわけがない。]
(*16) 2018/05/21(Mon) 12時半頃
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誰…………?
[短く混じった囁くような声>>*13 ──いつも聞いていた、ような。
弱った子供のような戸惑いの問いに、返る音はあったかどうか。]**
(*17) 2018/05/21(Mon) 13時頃
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[ だから、自惚れていたのかもしれない。 ]
(*18) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ 誰も俺なんて見ていない。 この瞳がみていたものだって、きっと。
俺を通した、別のなにかだったんだろう? ]
(*19) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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この声が聴こえるのは、薔薇に呪われた奴だけ。 欲望や、奪ってでも手に入れたい想いがある奴だけ。 モリスもそうだし、……さっきのも。 まあ、誰とはいわねーけどさ。
[ なぁ、と(>>*13)聞こえた声の主の名を謂うことはなかったけれど。 ]
モリスは想いを遂げたからね。 疲れて寝ちゃったんでしょ、きっと。 大丈夫。朝になれば起きるよ。 そんで、きっと、いっちゃんの傍にいてくれる。
[ 来るかもわからない朝は、きっといつか来る。 その時傍にいるのは、咲きもしない薔薇なんかじゃない。 夜が明けたあと、横にいるのはきっと《いつも》の。 ]
(*20) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ 自分でもわかるほど、薔薇の匂いが濃く、なる。 ]
(*21) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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───俺の勘違い、だったんだな。
[ こんなに必死になってくれる姿は たぶん、俺のためなんかじゃなのに。 恥ずかしいと思うより、傷ついたこの手より。
空っぽのはずの場所が、今更────痛い。 ]*
(*22) 2018/05/21(Mon) 19時半頃
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[ 絵画のような風景だけを見つめ続け 庇護する腕に、欲望をぶつける
どちらに対しても残酷な仕打ちだ。 ]
(*23) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[薔薇が呪うとはどういうことなのか それは、君もなのか。 さっきの声は「彼」なのか。 言いたいことが沢山あった筈で、
全部頭から消えてしまう。]
遂げた、って ……君はどこまで、俺達のことを
[身体から温度が去っていくのを感じる。
モリスに打ち明けられたことは この男には、この男にだけは 絶対に知られたくないことだった。]
(*24) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ きっと、あの微笑みではない違う顔が見たかった。
……それはこんな表情では無かった筈だった。 ]
(*25) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ 連なるように放たれた香りが
何故だか、混ざり合わないように感じた。 ]
(*26) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[俺が彼のために行動したのは、今この時だけ。 最後の最後、終わりの時だった。
ずっとずっと甘えていた。 自分には恋愛は許されないと思うのなら 秘めたままでいるなどと自分に酔わずに
────離れてしまうべきだった。]
ち、…………
[違う、なんて。 今更言う権利があるわけがない。
抱き締める彼には見えないところで泣きそうに歪む顔。]
(*27) 2018/05/21(Mon) 21時頃
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[ 腐り落ちていく、終わりの香り ]
(*28) 2018/05/21(Mon) 21時半頃
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