―その後の、 ―
[酒場の近くの大きな十字路を左に曲がって、暖かい頃は変わり者のピエロが佇んでいた角の更に奥の、細い横道。
少し薄暗い道を歩き、突き当りを右。
街の奥の奥。深い裏路地。
深い緑色をしていたであろう扉は木製で、腐ってその役割を果たして居ない。
真鍮製のドアノブはすっかりくすんで回りもしないし、強引に扉を引けば木片が剥がれ、ガランと、ぶら下がって居た鐘が落ちた。
扉をこじ開ければ内部は埃と蜘蛛の巣で満ちて居て、カビの香りが鼻を突く。
木製のカウンターも扉と同じように朽ち果てて、触れれば簡単に破片を散らせた。
壁に並んだ棚も、同じこと。
店内にはそれ以外に何も無く、足を踏み入れる毎に埃が宙を舞う。
地下と二階への階段もそれぞれ朽ちて、階を覗いたとしてもこの部屋と同じこと。
酷く暗い店内は、ずっと昔からその姿だったかのようにそこにある。
近所の住人に店の詳細を聞いても、ここは10年近く空き家だと言うだけ。
薬屋があった事など誰も覚えていない。
一部を除いて。*]
(@57) mzsn 2014/11/03(Mon) 01時頃