【独】 琴弾き 志乃

――回想：女童と手毬唄――

[揺蕩えども移ろわぬ、天上の日々。
それに厭いたと言えるほどには、生まれて日も経たぬ頃のこと。
団子屋へ寄った帰り道、土産を手に歩いていた時だったろうか]

……？

[てん、てん、てん。毬の転がる音と。
ぽた、ぽた、ぽた。雫の落ちる音が。
華月邸の垣根の向こう、そこから聞こえてくるようで]

（……華月さま？　ではないわよね……
まさか童女のように毬をつく趣味があるとは思えないもの）

[はしたない、とは思いながらも、そっと首を伸ばせば。
小さく小さく身を屈め、ひとり泣く少女の姿を見たろうか]

(-959) めえこ 2013/08/19(Mon) 18時半頃