[そんなこんなで、裏山への道をなりふり構わず走っていたのだが、昼間の疲労もあってか目的地にはまだ着かない。
だが不思議なことに、麗亜は肩で息をしているものの、この濃霧の中を走って汗ひとつかいていなかった。
そのことに気づく余裕など今の麗亜にはなく。
それから、自分の身に起こっていることにも、気づいてはいない。
きらきらと、麗亜の身体は淡く青白く輝いている。
光の正体は、光を放つ小さな氷の結晶。
麗亜の周りの水分が急激に冷やされて、小さな小さな結晶となって浮かんでいるのだ。
怪異の呼んだ濃霧に誘われて、踊るように。
少し前に学園内で『真堂麗亜からはマイナスイオンが出ている』と噂がたったことがあった。
それを最初に言いだしたのは、他でもない、”眼”を持つ、許鼓ナツミだ。
今の麗亜の状態を形容すると”そういう風”になるかもしれない。
もっとも、この濃霧の中、遠目から青白く光る様子を見ればもっと違うもの…怪異ご定番の人魂のように見えるかもしれないが。]
(501) 2018/09/11(Tue) 21時頃