村に着いたはいいが、そこでは人狼がなんだと騒いでやがった。
俺は、そん時は馬鹿が騒いでるんだと思ったよ。だが、そうじゃなかった。
引渡しを終えた夜の事だ。
宿の部屋の扉を叩く音がしてな。開けたら、子供が立ってた。掃除に来たって言うから、俺は宿の娘かなんかだと思って部屋に入れたんだ。
そしたら、花を買ってくれとか言い出しやがる。
馬鹿言ってんじゃねえって言ってやって、帰れって言って背中を向けたら、だ。
相棒が、危ないって叫んでな。
振り向いた瞬間、相棒が俺を突き飛ばした。床に転がった時、相棒が首を真っ赤に染めて血を流してるのが見えた。喉をな、ざっくりとやられたた。声も出せなくて、血の泡を吹くばかりだった。
この左目は、そん時にやられたもんだ。
……結局、その人狼は捕まらなかった。
殺すだけ殺して、逃げたって話だ。
(352) 2010/02/22(Mon) 21時半頃