[最後に彼の体液を味わったのはいつのことか。
昨日か或いは去年か、それとも百年前か──。
それでも重ねた唇から委ねられた唾液は、霞掛かった頭の中で確かに鮮明な形を持って存在している。
ルールやマナーを捨てろ、と"命令"されるのもいつものことだ。
ライジはいつも、優しい。
多少ぎこちないながらも笑みを見せようとしてくれる彼の方が、本来は己よりも遥かに優しいのではないだろうか。
酷くされた記憶が残ってないだけなのかも知れないが。
少なくとも、己の為に他者を利用しようとせんが為に浅ましい記憶のみを留めている己よりは。
会話の合間、離れた己と彼の唇を繋ぐ銀糸の軌跡に視線を落としながら浮かべた微笑みは、いつも描く綺麗な弧ではなく右側だけを上げる歪な形。]
貴方を頂戴?ライジ。
たくさん、たくさん。アタシが満足するまで──。
(287) 2014/12/24(Wed) 01時半頃