―大通り―
[元来た道を歩くうち、一人の男性>>240とすれ違った。
背の高い、紳士な服装をしたその姿を、少しの間瞳に写し込む。
普段のジャニスであれば、別段気にする事も無かっただろう。きっと、先にあんな出会いをしたからだ。
小さく落とされた疑問の声に、ほんの少し意識を持っていかれる。流石に話しかける事は無かったが。
まさかその紳士に、呼び止められるとも思わずに。
戸惑いのままに僅かに眉を寄せて、進めかけた足を地に付ける。そうして、芝居めいた仕草でゆったりと相手へ向き直った]
……君って、アタシの事?
[少し前に落とした言葉を、目の前の紳士へと贈る。
ほんの少し不機嫌そうになったのは、彼の顔を見上げなければいけなくなったから。
ジャニスは容姿においては絶対の自信を持っていたけれど、身長だけは駄目だった。伸び悩んだそれは、舞台の上ではヒールで隠しているけれど、生憎と今日は踵の低い靴を履いている]
(244) 2014/10/02(Thu) 02時頃