――……あの、
[戻っていい、その言葉に椅子を立ちかけるも、触れた掌が離れる前に唇を開く。
僅かの間、言葉を探して。]
その、……曲を、……聞かせて貰えない、か、……ですか?
どうせ戻っても、……俺、その、洗濯とかしなきゃだから。
……仕事サボる、口実を、……とか、
[言葉を選びながら口にするうちに、だんだんと視線は自らの手元へと降りていくだろう。
我ながら、何を言っているのだとは思うけれど、一度言葉にしてしまった以上取り消しはできない。
それが、上位の者に対する、下位の人間からの言葉であっても。
指先は、自らのシャツの裾を弄ぶ。]
……迷惑なら、いいです。……ごめんなさい。
けど、……俺みたいなのに、聞かせたいって言ってくれたのに、……申し訳なくて。
[音楽に対する知識はからきしだ。
けれど、そんな風に自分を気にかけてくれたのならばと、微かに口元ははにかむように微かな弧を描く。]
(239) 2014/12/28(Sun) 23時頃