『アンタなんかが好きな奴、いるわけないじゃない。
友達のひとり、家族のひとりでも、いると思ってたの? 脳天気ね。
いい夢見れたでしょう? ねえ、私たち、指折り数えて待ってるのよ?
はやく――なさいな! この、……――!』
[懐かしい声だった。今でも夢でよく聞く、あの日のできごと。
かかってくるはずもない、あの女の声。
あるいは電話越しの嘲笑が、二人にも聞こえたかもしれない]
[普段なら、それでも耐えられただろう。しかし、この現実ではありえない事態。
実際に、友達を失っただろうという思いも相まって、わけのわからない感情が暴れ出し――
窓ガラスにあの女の顔がうつりこんだような気がしたその瞬間、勝手に右の拳を叩き込んでいた]
……ッ。ヤベ、右手……
[ギターを弾くことを意識して、常に気をつけていた右手だというのに]
(231) 2010/08/03(Tue) 00時半頃