[何だか妙な取り合わせだ。
景色は変わらぬ自分の部屋だというのに、主の次に敬うべき存在が、堂々と寝台に横たわっている。
椅子に腰をおろしかけながら、そんなことを思っていたが。]
……あ、……はい、
[そんな風に言われて手招きなどされれば、もう頷くしかないではないか。
できるだけその体を揺らさぬように、そっと寝台の際へと腰を下ろす。
古い革の表紙を、そっと開いて。]
じゃぁえっと、……つまらなかったら、寝てて、いいから。……いいですから。
……夕飯に起こすんで。
[そう、前置いて。]
……むかし、むかし、……ある、ところに、……
[文字の一つ一つを、指先でなぞりながら読み上げていく。
文字に慣れていない頃は、今自分がどこを読んでいるのか、わからなくなることがよくあった。
その習慣は、今でも抜けていない。]
(230) 2014/12/26(Fri) 00時半頃