― 夏の補講 ―
[プリントは、おそらく1番に解き終えて。
けれど、なかなか立ち上がって教壇の鳴瀬の元に行けない。
ぼぅっと窓の外を見ていた。
楓馬の眸の色に似た、桜の葉の碧が夏の陽に眩しい。
どれくらいそうして居ただろうか。
気がつけば、自分以外に4人程いた補講生の姿は、もしかしたらなかったかもしれない。
そもそも成績が悪くて呼び出されたでなければ、そのようなものだろう。
まるで、一対一を狙っていたかのようになってしまい、困惑する。
それどころか、出来れば避けたいと、思ってしまうのは仕方がない。]
――……鳴瀬先生、できました。
[それでも、ずっとこうしている訳にも行かず。
意を決して窓際の席から腰を浮かした。
向かう先は、教卓だったか。
差し出すプリント――……視線は合わない。合わせない。合わせられない。]
(219) mitsurou 2011/05/27(Fri) 23時半頃