[いくら自分の毒で利きが甘いといっても、長らく放っておいたツケだろう。足元が甘い。
自重に負けて花弁を痛めた花が生え変わる。その場に散らばる花々は甘い香りを拡散させて。脳の心を麻痺させるような濃い香りの中、道化は床に散らばる赤い薔薇を一輪、掬い上げた。
その右手に持ち替えたまま、誰も来ないうちにと、別の出入り口から反対側の通りへと抜け出る。
外に出れば吐き気をこらえ切れぬ様、胃液が口から溢れる―はずが、たくさんの花弁が溢れてくるだけ]
ああ――……!
とうとう毒が頭に回ったのでしょうか、幻覚が見えるようです。
これ以上馬鹿になったら、道化はどうなってしまうのでしょう?
なにか考えようとするたびに、まずは自分の名前を思い出そうとしなければならないのでしょうか。道化かなしい。
[すん、と鼻を啜るふりをしても、口元は笑みのまま。
道化はゆっくりとした足取りで人が居そうな広場へと進んでいく。
けれど足元も危うい様子、後ろから追いかけてくるものがあれば――、ね?]
(195) 2011/10/22(Sat) 11時半頃