[器に広がるスープはお店の外装を思わせる淡い赤色。
銀色を沈め掬ったスープを、静かに口へ運んだ。
疲れた身体の芯から力が抜けるような、暖かくて優しい味が広がる。自然と吐息が漏れる。
次は、くたくたのキャベツの出番だ。
繊維までしっかり煮込まれた葉は、口に入れるだけで蕩けるようだった。この時期甘みの増したキャベツは格別だ。
トマトの酸味もクリームとキャベツの向こう、香草と共に僅かに顔を覗かせる程度だ。
主役と言っても過言ではない白いソーセージは、フォークで捕まえた。
野菜のお出汁をたっぷり吸ったお肉が、噛んだ瞬間弾ける。噛み締める度に肉汁が溢れて口内を満たした。
そのまま赤い海を漂う貝、コンキリエを口に運べば、もちもちした食感と小麦の甘みが加わって、相乗効果のように旨味が広がっていく。]
(188) 2019/11/24(Sun) 01時半頃