(……見られてしまった)
[思ったのはそんなこと
とはいえ、実のところ不味い訳ではない。己の正体がバレて困る相手は全員檻の中だ。
それでも彼がもし、良からぬことを考えていたなら……己は教えられた"正当防衛"をしなければいけなかっただろう。
結果的に彼は深入りしてこなかった。それどころか頭部をすっぽり隠せる帽子をくれたのだ。
無償の好意。それを前に今まで無機質だった心がほのかに熱くなった……それが己の"人"としての始まりだろう
それから彼の好意には甘えっぱなしだ。
時々持ってきてくれる品々は好奇心を絶え間なく刺激する。
その中にあった"漫画"なるものは特に良かった。元より読書が唯一の趣味だったので瞬く間に馴染み――現在に至る
先輩と後輩の概念は此処で学んだ。男らしい喋り方や一人称もそこで。
…まあ、チャラ男化の一因もそこに潜んでいたかもしれないが、彼には知る由も無かっただろう]
(181) 2018/10/05(Fri) 21時半頃