人狼議事

167 あの、春の日


【人】 露店巡り シーシャ

……。

[黒猫はその貧層な身体をイーゼル群に滑らせると、一つのキャンバスの前に立つ。
描き手が居ないまま、勝手に他人の作品の前に立つ事は、覗き見をしているようで少し後ろめたくもあったけれども。
いつもあの人の絵の前に立つと、毛が総毛立つような厳かさと、それでいて聖母のような慈しみに触れているような気がするのは何故だろうか。

息を飲む。思わずその絵に触れようとしている自分に気が付いたからだ。
腐れ縁の真似では無いが、己の左手を殴りたくなった。
それでも、手を伸ばしたくなる誘惑が襲ってくるのを、静かに何度も殺した。
後ろで彫像達が、無言の非難を自分に浴びせている気がする。それでも呟かずにはいられない。]

――……綺麗だ。

[零れてくる言葉は、ただそれだけで。けれども、吐息は熱っぽく。
彼女の描く絵を己が好きな事は、恐らく本人は知らないのだろう。
白百合のようなあの細い手から紡がれる命を、こうして、こっそり眺めているだけなのだから。
彼女の絵が褒められる時は、自分の絵が褒められた時以上に嬉しかったものだ。]

[でも。もう、それも――桜と共に。遠くに。手の届かない処へ。**]

(173) 2014/03/04(Tue) 03時頃

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