[これは、彼のその行動から。恐らくは彼の持つ時計は、自分の探しているものでは無いのだと判断しての事。
彼のその物言いと、仕草から。こう言った輩が"そういう事"をする時は、大抵は此方の気を引き揶揄いたいだけの事が多いのだと。
――無論、彼が余程の策士か或いは余程の馬鹿であるのならば、その限りでは無いのだけれど。
その場合は、また別の手を考えれば良い事だ。
だけれど、薄く笑みを浮かべていられたのも其処までの事。
彼が最後に吐き出した皮肉めいた労いの言葉は、流石に男の眉根に深い皺を刻み込ませた。]
……まったくだ。
あぁ、其処に扉があるが、"公爵夫人"の居る扉はまた別の扉なのかな?
[それに対して返すのは、唯の一言。思い出すのは、無論先程のあの"悪夢"。
――彼が自分のその醜態を知っているとは思わない。思いたく無いが、それにしても思い出したくもない事には違い無い。
だから、行く手にあった一つの扉を指差して。"きっと公爵夫人の場所を知っているのであろう"時計ウサギの返答を待ってみれば、果たしてどう返って来ただろうか。]
(173) 2015/06/18(Thu) 22時半頃