……そうか。残念だ。
なら君がもしも何処かで、蝶と蜘蛛とを背負った足のついた時計を見かけたのなら。
木の枝と蜘蛛の巣で虫取り網を作って、その時計を捕まえてくれると助かるんだがね。
出来れば、蝶の翅がもげないように、……優しく。
[打ち鳴らされた踵の音>>157と、彼の言う軽口には、此方もまた戯けたような口調で返し。溜息と共に肩を竦めて見せてやったから、精々困っているように見えてくれた事だろう。
そうして、視線で指し示すのは胸のポケットをゆるりと撫ぜるウサギの指先。
細いその指先が形取るのは、先程まで彼が手にしていたあの時計に他ならない。]
……所で"その手"は、さっきの私の皮肉に対する仕返しかな?
もしもそのつもりなら、もう少し"上手く"やる事をお勧めするよ。
[消した笑みを再び顔へと戻しつつ、片眉を持ち上げて口だけ笑みを強めて見せ。
またも皮肉交じりにそう"お勧め"したのならば、さてこの意外に意地の悪いらしい"時計ウサギ"は、どんな反応を返しただろう。]
(172) 2015/06/18(Thu) 22時半頃