─廊下─
[硝子戸から玄関は然程距離は離れておらず。
鈴の音と共に現れる『蝶』の姿に双眸を眇めて息を吐く。>>160
何度か顔を合わせたその人を横目で認めつつ、擦れ違うようなら一言かけようと歩み寄り]
…またいらしたんですか。
[なんて、珍しいものをみるような顔を態とらしく浮かべては小さく笑みを送っただろう。
月見を共にしたあの人も。
いずれは顔馴染みの一人となるのだろうか。
顎に指をやり、想像しては。
やがて髪を散らし、薄暗い廊下の先を見渡す。]
…あぁ、そう言えば。皆は何処へいるのやら。
[先程擦れ違った櫻子と、姿を掠めたような気がした…丁助と。
他にも日頃世話になっている朧や、藤之助とまだ一言もまともに声を交わしていない気がして。
胸に僅か積もる寂寥感を抱きながら、お客人に会釈しつつ遊郭の奥へと歩を進めようとしただろう。]
(165) 2014/09/13(Sat) 19時半頃