[出てきたアップルパイに少しだけ苦笑い。
明らかに手が加わっている、が大それたものでもない。ちょっとしたサービス精神と思えが嬉しくもある。
琥珀色のグラスを手にとって口元へ。癖のあるピートの香りと微かにバニラの香り。ゆっくりと香りを楽しんでからグラスを回す。カラカラとロックアイスが音を立ててアルコールを薄めてくれる。とはいっても総量は変わらないのだが。
一旦グラスを置いて、さすがに手袋のまま掴むわけにもいかずフォークとナイフでアップルパイを切り分ける。]
甘い。
[サクサクとしたパイ生地、広がるシナモンの香りと林檎の甘味。バターの香りと甘みそして砂糖の甘さが口の中で混然一体となる。
唇を白く染めた粉砂糖は舌で舐めとった。]
レシピを売ってくれ。
世界中で売ってきてやるよ。
[不敵に笑ってウツギにそう告げた。]*
(154) 2019/11/26(Tue) 22時半頃