[ ――ふと、男は彼の視線が自分の十字架に遣られていることに気が付いた>>126
気付いてその模様を指先でなぞる。 今は信仰も何も無い。残ったのは、ただの「知識」である。 「善」である。
祈りを捧げ身を清め――それで得たものは何であったか。 男はまだ、知らない。
そうしてやり返すように、彼の首元に下げられたネックレスを見つめた。誰かからの贈り物だろうかと、以前から考えて居たこと。
青白い石は妙に彼に馴染んでいる気さえした。 錯覚かもしれない。]
女医はそうですね…。実験差中の姿は、サディストにも思えますが。
[ くるくるとパスタを巻いたフォークを持ち上げ、ぱくり。
冗談めいて言ってはみたが、当の本人が居れば何と言われただろうか。彼女の目立つ髪色を思って、男は少しだけ笑えた。]
月見さんはこの後、何か用事でも?
(148) 2015/07/10(Fri) 00時頃