[ヨアヒムには大した頭はないが、それでも政治という局面で生きてきた狡猾さはあった。]
この宿の主人が死んだのだろう?!なら普通は宿の主人と諍いを起こした人間が怪しいにきまっとるじゃないか!
疑わしい奴はこの建物の外に叩き出せばそれで解決だ!他の建物に行ってもらえばいい。
[無論、他の建物に行けるなどとヨアヒム自身思っていない。だが「疑わしいから外に出した」だけだ。周りの連中の言う「処刑」などしたら己に殺人の罪がかかる。それこそ自分の政治生命にかかわるのだ。
そうして当たりをぐるりと見渡した後、最後にアランに鋭い目線を送る。]
アラン!貴様もなんだ―――能力者?ばかばかしい。
己に選ばれた能力があると思っているなら普通は隠しておけ!自分自身が狙われることを全く考えなかったのか?!
[そのままどたどたと階段を上がる。]
わしは着替えるぞ―――アラン、ついてこい。
[アランがついてくるかはわからなかったが、少なくともびしょびしょの寝間着から着替えようと自らの部屋に向かった。]
(135) 2015/05/28(Thu) 13時半頃