……思い出せ、か。
そもそも盗まれた物すら忘れているというのなら、そんな物を盗んで何が楽しいんでしょうねえ。
[先に彼女は、記憶も欠けてはいないと言ったけれど。其の事を証明する術など、ありはしない。
"もしかしたら、もう何か盗まれているかもしれませんよ"、なんて。肩を竦め、精々皮肉げに言ってみせた。勿論、その言葉はそっくりそのまま自分に返ってくると、分かってはいたが]
――こんな悪戯をされる様な恨みを買った覚えは、無いんですが。
貴女にはあります?
[恨まれる程薬の値段を吹っ掛けた事も無いし、個人的な付き合いなど殆どしてきていない。多少愛想の無い接客はしたものの、恨まれる程のものではない筈だ。
目の前の彼女も、此方に来て然程時は経っていないから。きっと心当たり等無いと言われるのだろうと思いながらも、確かめる様に問いを投げた]
(121) 2015/01/21(Wed) 22時頃