─ 診療所・朝 ─
[カーテンを開ける。
じゃっと小気味良い音がして、診察室に朝の光が満ちた。
エマはガラス越しの冬>>11の光に目を細める。
窓のずっと先には村外れの泉>>#1が見えるけれども、
夜深く、ランタンを手に自警団員たちが厳粛な>>#1顔つきで集まっていたことは知らず、
慣れた手つきでてきぱきと室内の掃除を始めた。
器具やカルテは使用後きちんと片付けてあるので、床の土埃を玄関扉から外へ掃き出し、机や椅子の上を簡単に水拭きすれば終わりだった。
今、村の診療所に常勤の医師はいない。
半年前、エマの夫が亡くなってからは、隣村の診療所から週2日やってきてくれる新米医師が頼りだった。
その彼は今週、来れないという。
酷い風邪で寝込んでしまったという手紙が、
昨日、郵便ではなく顔なじみの薬屋に託されて届いた。]
(121) 2017/02/16(Thu) 16時半頃