[成る程、成る程。
俺が"アリス"なら、アレは"時計ウサギ"と言ったところか――と。
妙に納得した気分で、この巫山戯た出来事の連続にクツクツと喉の奥から笑みを零しつつ、腕を組んでその"時計ウサギ"を軽く観察してみる事にしようか。
そうして、そんな時。
その"ウサギ"が少しだけ身体を傾けた時に、その手に握られた"時計"の存在に、男は思わず瞠目した。
遠目ではあったから、その時計が自分の探している時計と同じ物なのかはわからないけれど。
だけれど確かめる価値はあるだろう、と。今迄よりも僅かに早い足取りで、"時計ウサギ"の方へと近付いて行く。]
――……御機嫌よう、"時計ウサギ"さん。
今日はお急ぎじゃあないのかな。
お急ぎじゃあないのなら、……悪いが、私に少し時間を貰えないだろうか。
[軽く手を挙げて、薄い笑みを浮かべたままた"時計ウサギ"へとそう声を掛け。
此方からは見えない"時計ウサギ"の手の中の時計へとそっと視線を掠めさせれば、さて。
この"時計ウサギ"は、逃げずに居てくれると良いのだけれど。]
(119) 2015/06/18(Thu) 16時半頃