……すまん。>>99
[イアンにそう告げる手の中で、雷の力が増幅される。
これは、ツェツィーリヤが魂に秘められていた何かが、具現化したものなのか。
それともただ、彼女が最後に愛用していた供物が、雷の力を帯びていたからだけなのか。
手の中で感じる力の増幅とあわさって、宙に浮くツェツィーリヤの体が、球体の光に覆われていく。
その表面に、いくつも放電の筋を従えて。
その姿はさながら、赤い雨にもかき消せない、雷《イカズチ》を纏った聖女のごとく。
後方より感じる、絶大な魔力。
その明りは、頭の一部を欠損したヴェラを、明るく激しく照らしている。
もはやイアンを自らの手で、彼が目にしてきたヴェラのやり方で、殺してやることは叶わないだろう。
「だがな」続けた言葉の後で、蓄積された魔力を開放すべく、右手を力強く握りしめた。
それすらも、実際には叶うかどうかは分からないけれど……]
(109) 2013/06/18(Tue) 19時半頃