…独りじゃ、物語は綴れないもの。
[ぱちぱちと乾いた拍手を他所に、拗ねさえ伺える声色で学生は言いました。独りじゃ登場シーンしか紡げない。馬車も魔法使いも、硝子の棺を運んでくれる召使も、どこかへ連れて行ってくれる人が居ないから。
哀愁さえ滲ませた表情は無意識の水面下。言葉に含まれる棘は、「王子様」の居る誰か彼かを妬み恨み醜悪な色さえ滲ませ。学生はその事に気が付いたならば、ハッと顔を瑜伽め俯きました。咎めるように唇を噛み、抑揚を付けて話され続ける声色>>89に耳が痛いと首を振り。
頁に綴られる軌跡は生半可なヒロインには酷く鋭く冷たい。無駄な強情を張る理性が、ガリガリと猫の爪先で削られる前に、学生はその耳に自分の手で蓋をします。傷みに気付かぬ果実のままで居たいから。いつまでも守られる人でありたいからと自分の弱さを前面に。]
…――あなたって、イジワルなのね。
猫よりもっと質が悪い、言葉の毒を手向けるマジョ。
[蓋の上からくぐもり届く紬歌にちいさく溜息。誘因を、寧ろ実質一択の問答を進める猫に顰めっ面。態とらしく頬を膨らませて見ては、すぐに萎ませて見せたでしょうか。]
(109) 2014/10/01(Wed) 18時頃