[手のうちで感じるのは、ばちり、ばちりと爆ぜる稲妻の胎動。
共鳴するかのごとく、雨雲に覆われた空が、ちかり、ちかりと瞬きだす。
雨と共に弱弱しく落ちてくるのは、ぱちっ、とようやく耳に届くほどの、か細い雷筋。
ぱちっ、ぱちっ、と幾筋も。
ツェツィーリヤを中心として。囲む森を丸ごと包み込むほどの、広範囲の内側で。
水に溢れた地上に落ちるたび、ぱちっ、と音を立てて爆ぜる雷光。
それを、「使わせてもらう」への是の返答なのだと、感じるほど傲慢ではない。
己はただ、これから獣臭い思考のままに、ツェツィーリヤの命を喰らうだけだ。
ただ、同時にこの想いが固まっていくのは、ヴェラがなおも魔法使いであり、人間である証左だろうか。
「ツェツィーリヤ」と、血濡れた顔でようやくはっきり名をあげて。
彼女の姿は見ぬままに、迷いなく、宣言した]
(107) 2013/06/18(Tue) 19時半頃