[相手の思惑に知らずに乗せられたみたいに、首を擦る動きをとめて、のろりと顔を上げた。
何言ってんだコイツみたいな、やや怪訝めいた表情を向けたのは数瞬の事で、次の瞬間には何処か呆れたように双眸を細めて兄を見た。]
―――…、
自分は途中でやめたくせに僕にはやらせんのかよ。
ほんとアンタのそーゆーとこ、だいっきらい。
[全く頷く気になれない願いにほんの僅かに眉根を寄せる。
何のつもりかはいまいち理解できない。理解できる気もしない。
どうしてこうも思考にズレが生じるのか。毎度の事だけど。]
ねぇ。コレほっといたら死ぬかなあ。
[身を起こした相手がベッドから立ち上がるなら、軋んだ音につられるようにシーツに視線を落とす。右手の下につくられた赤い染みから引き剥がすように、ゆっくりと腕を擡げてぼやいた。
どうせその前に治療されるだろうし、今この瞬間においては、もうそれを待とうとも思わないけど。だからこそ現状に不釣合いともとれる冗談めいた口調でそう零した。意識して聞かなきゃただのいつもの眠たげな声なんだろうけど。
もう大分血は止まってきてる。]
(106) 2014/06/28(Sat) 17時頃