[重なる手は幾分か自身の物より大きく感じられた。>>82
伝わる人の温かみ。何処か慣れぬ感覚に、求めたのは自分の方だというのに、少し顔を逸らしてしまう。
だが蝋に翳り差すことで増される『蝶』の鮮やかさに。浮かべられた笑みに。握る手にほんのりと力を加えては口元を緩めてみせて。]
…人前はあまり得意ではないのです。
[なんて。
殊勝なことを口遊みながら、鉢の中の金魚が小さく音を立てて舞い踊る。蝶が暫し瞼を下ろしていたのなら、薄明かりの中でも一際映えるその横顔に一瞥しただろうか。
手を引かれるまま、廊下へと足を踏み入れる。
青年の言葉を辿らせるのならば、向かう先は玄関付近の中庭だろうか。
先程耳にした床の軋む音は、何処かあやふやなリズムを奏でていたように思えたけれど。>>37
同じ人であるようには思えず。
連れられる道中、歩を進めながら思案していれば、甘い匂い>>101が鼻を掠めたような気がして。
ちらりと視線を向けた先、柔らかそうな笑みを零す『花』を見つけられたのなら、曖昧に笑みを向けてみただろうか。]
(105) 2014/09/13(Sat) 00時頃