[ランタンの柔らかな灯りが揺れる賑わいの中を一人で歩いていると、まるで知らない場所にいるみたいだ。
場所だけじゃなくて、自分も他の誰かになったよう。少しだけ背伸びした化粧も、そんな気分を手伝っているのかも知れない。
いっそ、眼鏡も外してしまおうか。
そんな風に思ったのはほんの気紛れで、祭りの賑わいに充てられたんだろう。
視力は、実はそんなに悪くは無いのだ。唯、薄いレンズ越しだとしても、他人の視線と直接向き合わなくて済むというのは、いつもケイトを酷く安心させた。
レンズを通さない世界は、ぼんやりと滲んですれ違う人の顔も形も曖昧にする。
けれど、目を閉じると、ざわめきの一つ一つは確かに知ってる村の人たちの声なのだ。]
(誰も私を見付けない。私に、気付かない。)
[不思議と孤独は感じなかった。
少し遠くで、聴きなれない女の子の声>>68。ドロテアの大きな独り言は、通りの向こうから。>>79
アランやジリヤは来ているだろうか。ヴェスパタインにも、今年のランタンの感想を言わなくちゃ。]
(──ああ、やっぱり、私。
この村も、村の人たちも。大好き、よ。)
(91) 2015/05/26(Tue) 00時半頃