― 海岸近く(夕方) ―
[右手には凍り付いた海が見える。朝訪れた時と変わりなく、まったく動かない。
早く、早くもとに戻って欲しい。仕事ができないからというのもあるが、それ以上に、静かに打ち寄せる波が見られないのが残念なのだ。]
ん……シー?
[やけに静かだなと思ってシーを見ると、二つのマフラーに包まりながら、こくりこくりと船を濃いでいた。肩から落ちないのが、いつ見ても不思議だ。
以前からシーはよく眠る方だが、寒くなってきてから眠る時間が増えた気がする。
脳裏をかすめたのはティモシーの話だが、そういう体質なのかもしれない。
何でもないといいと切に願う。]
そうだ、明日マユミにマフラーを返さないと。
[静かに寝息をたてるシーを、落ちないだろうけど念のためと手で支える。
早く帰ろう。海は動いてくれないけれども、納品物を仕上げる作業が残っている。]
(80) 2013/12/16(Mon) 23時半頃