あんたから施しを受ける心当たりが無いって話だよ。
見ていて楽しいってんなら。手前の頭に乗っけて鏡見た方が、よっぽど有意義だ。
[こうして自然と、装飾品を取り出す程だ。自身よりもずっと見た目に気を使ってはいるのだろうと 顔も知らぬ女の姿を脳裏へ描き。
髪を梳かれるのに合わせて 掛けた手を渋々と下ろしながら、不満げに一つ 唸る。
物を捨てるだなんて そんな選択肢も、自身には有りはしないのだから。]
……それとも、何か。
頭に乗っけときゃあ、あんたがまた “見に来る” ってんなら。
[其処で はたりと。
“見ていて楽しい” …全く何が楽しい事があるか とは思いながらも、その言葉を上手い事 盾に取った積もりで、揶揄じみて返して見せる。
自身の唄は、商売道具とは云え 無理に押し付けて金を取る為の物では無い。
それでも、其の位の意趣返しは許されるだろうと 何を言っても愉快げに笑う相手への甘えにも似た何かは、有ったやも知れない。]
(80) 2015/01/23(Fri) 00時半頃