僕が好きなのは悲劇だから。
[そう、救いようのない悲劇が僕は好きだった。
それは隣の芝生が青いというより、ほらあそこにあんなにも荒涼とした大地があるのだから自分たちの庭は充分に青いでしょうと確認するような下衆な魂胆。
けれども僕はそこまで赤裸々に語ることはできなくて、こう取り繕う。]
だって悲劇って安心するでしょう?
最初から悲劇になると分かってるんだから。
[ふいに櫻子の口から言葉が漏れた。>>66
おそらくはヘクターのことを言っているのだろう。]
そう、嫌ってないの?それはよかった。
あんな人でも…こほん、ヘクターさんでも
嫌われるよりかは好かれる方がいいはずだからね。
[いやあの男なら真っ赤に泣き腫らした顔で嫌がられるのが一番好きだなんて言い出しそうだなと想像しながらも、自分の予想とは逆の言葉を平然と口にする。]
(74) 2014/09/22(Mon) 14時半頃