― 回想・アサブ ―
[やはり、何処か消耗しているように見える浅見に、其の表情を覗き込む。が]
あ…
[伸ばしかけた手から逃げるように。東雲自身を避けるように…浅見は後ずさる。
その距離が遠い。
距離が開いたのは、ほんの数歩。しかし、心が避けられれば、すぐに触れることの出来る距離が、とても遠く感じられた。
東雲は、そのまま固まっていた。何が起きたのか分からず、どうすればいいのかも分からず。
ただただ、浅見の表情が移り変わるのを見つめるだけ]
――いや…浅見君の、せいじゃ…ない、よ。
[彼は何を見たのだろう?
ただ、離れられたのが辛かった。メールはあんなに遠い距離を一瞬で伝えるというのに。
東雲だけでは、その気持ちを伝えるのには…勇気と、彼との近さが足りなかった。
浅見は謝り、泣き笑いの表情。
辛いのは東雲なのに、浅見もまた辛そうに見えて何も言えなくなる。
次第に目頭が熱くなるのは、東雲には抑えられなかった]
(58) 2010/06/10(Thu) 21時頃