[白狼は駆ける。激しい飛沫を上げながら、猛スピードで駆けていく。
それは、大したことではない。
荷に結ばれた馬を引き離すことは、通常の狼でも難しくはないのだから。
こんな供物の魔法を扱っていると、知り合った魔法使い達から訝しがられることがある。
3年も同じ種類の魔法を扱っていることは、「供物の備蓄がある」ですますが。
不思議がられるのは、ヴェラが無駄に魔法を使っているように見える>>37ことが多いからだ。
今だって、馬車に乗ったままでも、ごく自然に到着できるはずなのに。
そんな使い方をして、供物の消耗が心配じゃないのか? と。
戦いの場所が近づいていく>>48>>50。
狼は臭いを察知し、走りながら雨降りし空を、きっ、と睨む。
捉えたのは、はるか上空を旋回している、一匹の烏の魔物>>39。
魔法使い達に恐れをなし逃げ出したのか、果てまた、彼らより恰好の獲物、『ただの狼』を見つけて、標的を変えただけなのか……]
(56) 2013/06/10(Mon) 20時半頃